第29話 納得②
しばらく
「久しぶり」
「元気?」
「まぁまぁ」
少し話はぎこちない。久しぶり過ぎてなのか、もしくは何かを
「あ、あのさ」
「ん? 何」
「俺、今まで休みの日とかって外に出てたの。洋服とか靴とか、買い物したり映画観たり、ご飯食べて帰ったり」
「うん」
「仕事帰りは、合コン行ったりして楽しんだりさ」
「ふっ」
沢村は、吹き出した。そして、慌てて
「そうだよね、あの時も大変だったもんね」
「ああ、忘れてたけど。俺が水かけられた時ね」
初めて会った時は、水をぶっかけられた。
「でもさ、なんか最近、家で
「なんで?」
「まぁ、お金は使わなくなったんだけどさ、それでいいのかな。前と変わっちゃったことに自分でも
「そっか」
沢村は、カフェオレを飲んだ。いつもは、こんなこと人に話さない。なかなか、
「私は……」
「私は、
「どうして」
「う~ん、周りが言う、家が
背を少し伸ばして、遠くを見つめた。
「社会に出て、働いて、あらゆるというか見えない差を感じた時、ああ経済力とか大事なんだなって、言い訳にしたくないんだけど」
「うん」
「あっ、ごめんね。えっと、私と会ってからだよね。料理したりとか、
話が
「えっ、いや……」
俺は
「えっと、月本君だっけ。楽しめる時は、楽しんだ方が良いよ。そんなの後からでも、いつでも出来るんだから。私みたいに、あっという間に、おばさんになっちゃう。うん、えっと……私の言ってることは
「待って、そんなこと思ってない」
急に、沢村は距離を置いた。初めて名前を呼んでくれたけど、ちょっとよそよそしい。なんか、マズいこと言ったんだっけ。明らかに様子がおかしい。なんで? そんな自分で、おばさんって。俺は、
「俺、自分が変わってることは正直、
「ううん。もう40だもん」
「は?」
俺は、一瞬、頭がフレーズした。ちょっと待て、目の前にいる女性が40。何が?
「えっ、なんで俺と買い物とか行ったの?」
「えっ、計量スプーン欲しいって言われたから」
「いやいやいや、俺とスーパーにも行ったじゃん」
「あ~、行ったね。なんでだっけ?」
フフッ、沢村が笑った。俺は、少しイラっとした。俺の時間とトキメキを返せよ。トキめいた自分がバカみたいじゃね。何を、俺は考えていたんだ。かかっていた魔法が
「だから、嫌でしょ。こんな化粧っ気もなくて、年だけとっちゃって。ごめん、そんな……言い出しにくかったから、私からは連絡しなかったの。嫌ならこれで…」
少し、寂しそうな彼女の笑顔を、俺は
「べ、別に、驚いただけだから。あっ、そのデカいリュック何なんだよ。いつも、何が入ってんの。重そうだけど」
デカいバックパックをに
「あっ、これ? いつも仕事帰りにジムに行ってるから。着替えとか……」
話し始めた瞬間に、俺は顔を
「何? どうしたの」
「もう~! 俺と一緒じゃん。何だよ、ジムって。そんな顔してないだろ」
「どういう顔?」
「ごめん、ちょっと取り乱した」
ふ~っ、俺は大きく
「なに? 何、急にどうしたの。月本く~ん」
少し、
「ジムに行ってるんですか? あっ、会社の方? そっち?」
「違う、運動の方。
「うるせぇな、言ってみただけだよ」
もう、本当、上手く立ち回れない。待って、俺、本当はもうちょっと上手く出来る。
「健康診断で、運動不足で引っ掛かったんだ。だから、それで始めたの」
ああ、理由も現実的だ。そうだよな、きっとそういうお年頃なんだろうな。
「月本君は?」
「俺? 俺は……モテたいから」
「そうだろうね、そんな気がした。私ね、休みの日、ジムに行く時、お弁当持ってくの。
「ちょっと、待って。俺、初めて聞いたよ。ジムをピクニックのように行く人。水筒って、マイボトルって言えよ。ラウンジな、頼むから。もう、何なんだよ……」
彼女の
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