第37話
浅井side
学校を飛び出し、ププからもらった住所をマップに入れその印が示す先は今、俺の目の前にあるマンションだった。
切れた息を整えるようにオートロックのボタンの前で深呼吸する。
スマホの画面に記されている月島先生の部屋番号を緊張する指で押していく。
オートロックのインターホンからは呼び出し音が響くだけで繋がらない。
先生は俺が来ていると分かっていて無視をしているだけなのだろうか?
そう思いながらオートロックの前で何度もボタンを押していると俺は後ろから声をかけられた。
「あの…」
その声を聞き後ろを振り返ると、そこには俺より少し背の高い男性が強張った顔をして立っていた。
凸「あ…すいません。」
マンションの住居人だと気づいた俺がオートロックの前から退くと、その人は少し下を向き悩むような素振りを見せ、勢いよく俺の方に振り返る。
そのあまりの勢いに思わず後退りした俺が驚いているとその男性が言った。
「あの…さっき月島さんの部屋番号を押されてましたよね?」
凸「はぁ…」
「月島さんとはどういうご関係ですか?」
見ず知らずの男に突然、月島先生との関係を聞かれた俺は正直あまり気分は良く無い。
しかし、月島先生はインターホンを押しても出てくれる事はなく今、俺の目の前にいる男性はおそらく月島先生の知り合い。
だとしたら素直に月島先生との関係を伝え、この人に月島先生と会わせてもらうよう頼むしか方法はないと俺は思った。
凸「月島先生が働く学校の生徒です…今日学校に行ったら突然、月島先生が学校を辞めたと聞かされて月島先生の身に何かあったのかと心配して来ました。」
俺がそう言うと強張っていた男性の顔は柔らかくなり俺に優しく微笑んだ。
N「そうだったんですね。僕は月島さんの隣の部屋に住む中野です。実は月島さん2日程前に倒れられて僕が病院に運んだんです…病状も深刻で…」
中野さんの口からその言葉が出た瞬間、俺の頭の中は真っ白になり思わず足元がフラつく。
中野さんはそんな俺の腕をとっさに支えてくれて、マンション脇にあるベンチに座らせてくれた。
凸「すいません…先生は…月島先生は大丈夫なんですよね!?」
俺の言葉を聞いた中野さんは何度か頷き俺は少し動悸していた胸が落ち着いた。
N「今〇〇病院に入院してます。さっき心配で覗きに行ったら面会させてもらえるほどに回復してましたよ。もし、心配されてここまで来られたのなら今から行ってみられたらいいかもしれませんね。」
凸「…はい…わざわざ教えて下さりありがとうございます。」
俺は中野さんに頭を下げるとそのまま教えてもらった病院へと向かった。
大学病院で多くの人が行き交う中、俺ひとりが学生服を着て院内をキョロキョロしながら彷徨っている。
すると、総合案内所を見つけた俺はそこに駆け足で向かい月島先生の名前を告げ、調べてもらい伝えられた階へと向かった。
さっき会った中野さんは面会出来る様にまで回復していたと言っていたはずなのに、月島先生の名前が書かれてある病室には、面会謝絶の文字があり俺はぼんやりと病室の前で立ち尽くす。
月島先生は本当に大丈夫なのだろうか?
中野さんが帰ってから月島先生の容態が急変したのではないか?
最悪な事ばかりが頭に浮かんでいき俺の手が微かに震えた。
「この病室に何かご用ですか?」
そう声が聞こえ振り返ると、そこには背の高い白衣を着た医師が立っていて、胸元にある名札にはカウンセラー長谷川と書かれてあった。
凸「ここの病室に入院してる月島先生の教え子です……」
俺がそう言うとその医師はあっ…とした顔をした。
SJ「分かりましたここで少しお待ちください。名前は…浅井くんですね?」
俺の胸元にある名札をみた医師が俺にそう確認した。
凸「はい……」
俺が返事をすると医師は月島先生の病室に入っていき、俺は真っ白な扉をただじっと見つめていた。
つづく
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