第8話

浅井side


放課後



掃除当番をサボり、美術室に向かうとそこにはもう既に月島先生がいて、予定時間より早くきた俺に驚いた顔をしている。



凹「掃除当番は!?」


凸「サボった。」


凹「こ~ら!もう…今から戻ってして来なさい!!」


凸「どうせみんな掃除なんてやってねぇし。」



俺はそう言ってカバンを美術室の机に置き座ると、仕方なさそうな顔をした月島先生が俺の前の席に座った。



凸「で…なに?」



顔では面倒だと言わんばかりの表情を作っているのに、内心はなにを言われるのかドキドキしている。



そのドキドキは原付の事を学校に報告される不安からくるドキドキなのか…



それとも月島先生が目の前にいるドキドキなのか…



自分では分かっているはずなのに俺は小さなため息を落として分からないふりをした。



凹「あの…今度、絵のコンクールがあるんだけど浅井くん絵の才能あるみたいだからそのコンクールに参加してみない?」


凸「は!?コンクール!?才能なんかねぇし。ってかダルいから出たくない。」



コンクールなんてふざけんな。



そんなのに出たらクラス中の笑い物になってカッコ悪い。



真面目な顔してなにを言い始めるかと思ったらそんな事かよ。



俺は話は終わったと言わんばかりにカバンを持って立ち上がると、月島先生が俺の手首を掴んだ。



凹「才能あるのに…本当に絵…興味ない?変わったコンクールでね。夏休み中に開催地に行ってそこの風景を絵にするんだよ?1泊2日!先生と一緒に行ってみない?」



え…待て待て…



1泊2日のお泊まり?



しかも月島先生も一緒?



夏休みに?



いや、それって…旅行じゃん。



凸「月島先生も行くの?」


凹「当たり前だろ?誘ったのは先生なんだし、浅井くん1人で行かせられないから参加するなら責任持って保護者として一緒について……」


凸「行く!!」


凹「え?」


凸「そのコンクール参加する!!」


凹「本当!?よし!!じゃ、受付しておくね!!」



月島先生とお泊まりと知った俺が食い気味にそう答えると、月島先生は俺がコンクールに前向きになったと勘違いしたようで、嬉しそうな顔をするが俺の心は完全に下心。



まぁ、どうであれ今までコンクールなんて真面目の極みのようなモノには参加した事がないから少し不安ではあった。



後日、クラスメイト達は俺が夏休みに絵のコンクールに参加すると知ってみんな腹を抱えて爆笑していたがまぁ、それが普通の反応だと思う。



まともに授業すら受けていなかったし寝てばかりいたから。



しかし、月島先生だけは爆笑するクラスメイトに「一緒に応援しようよ!」と怒っていてその顔がまた、可愛くて俺はますます月島先生に夢中になっていった。



つづく

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