同じクラスの美少女が落ちていたので、取り敢えず拾ってみた。

沙月雨

第1話 拾い『もの』


突然だが、皆さんは何かしら拾い物をしたことがあるだろうか?


財布、ハンカチ、スマホ………などなど、人によっては多種多様の落とし物を拾ったことがあるだろう。

中には落とした人にとって大事なものだったり、急いで必要なものだったりしたら、――――まあそうではなくとも――――届いていた時安心するケースが殆どだ。



「それで、俺も前に財布を落としたことがあるんだが、交番に届けられててな」

「ほお」

「それはよかったね」



俺————天沢あまさわ那月なつきがそういうと、なんとも棒読みな返事が返ってくる。

それに何故だろうと首を傾げてから、俺はああと頷いた。



「二人は落とし物をしたことがないのか? それなら実感はわかないよな」

「あるわ」

「定期とかはあるけど」



先程と同じように————いや、先ほどよりも更にトーンが低い声に、俺はようやく二人が不機嫌なことに気づく。

そしてそんな二人に首を傾げてからあっと小さく声を上げた俺は「ちょっと待っててくれ」と声をかけてから、四人分・・・の牛乳を用意し、机の上にコトリと置いた。



「「なんで?」」

「ほら、イライラしてると牛乳を飲めっていうだろ。なんだっけ、鉄分だったか」

「それは肌にいいやつだよ」

「素肌は弱酸性だっけか」

「それはビ〇ラだわ! カルシウムだよ!!」



って違うこんな話をしたいんじゃない!! と叫んだ友人は、ガシガシと頭をかいてこちらに向き直る。

つられて背筋をなんとなく伸ばし、俺は小さく口を開いた。



「話がずれたな。話の続きだが、俺は落とし物をよくする質だから、親切な人には本当に感謝しているんだ」

「「へえ」」

「それで、いつも助かってるから、自分も恩返しがしたくてな」



そう言って俺は息を吐き、先ほど置いたばかりの牛乳のグラスを手に取る。

ゴクリ、と一口飲んで至極真面目な顔をすると、なぜか何とも言えない顔をした二人と目が合う............が、そのまま話を続けた。



「だから、俺は落ちてる『もの』があったら、できるだけ拾うようにしてるんだ」



そこまで俺は言葉を続けてから、目の前に座った友人達をもう一度見る。

その二人の視線が俺と、―――――そして拾い『もの』を交互した後、視線それが自身にうつったのを確認してから、俺は「そういうことで、」と言葉を続けた。



「同じクラスの女子が落ちてたから、とりあえず拾ってみたんだが」

「「今すぐ元の場所に返してきなさい」」



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