いちばん印象に残ったのは、最後に佑が当たった石を自分のものにせず、うた子に渡すところでした。
それまでの流れでは、うた子はしたたかな女給に見えていたのに、あそこでこの話の見え方が少し変わった気がします。きちんと「待っているひと」だったのだと感じられて、じわっと来ました。
店の雰囲気もとても良かったです。
雨、色硝子、薄暗い灯り、女給たちの気配、辻占売りの少女の無表情さ。どれも胡散臭くて少し妖しいのに、作り物っぽいだけでは終わらず、ちゃんとその時代の湿り気や体温をひしひしと感じることができました。
とくに金魚石や琥珀糖の美しさが、そのままこの作品の空気を支えていたように思います。
最後に佑が「世間ずれした女の中に――」という下りに残る読後感もすてきです。
華やかで妖しい話なのに、読後には不思議とやさしさが残る一編でした。