初めての任務 その②

葵と白華に連れられ警察署の中へと入る朱珠。


警察署に入ると葵と白華は受け付けに向かい、2人は警察手帳のような物を見せながら、受け付けの女性に話し掛けていた。


綾女 葵

『こんにちは。如月警部は、いらっしゃいますか?』


受け付けの女性は手帳を見た後、笑顔で話し始めた。


受け付けの女性

『御苦労様です!』

『如月警部なら、もう少ししたら帰って来ると思いますよ。』


そう言うと、受け付けの女性は少し背伸びをして、葵と白華の後ろを眺めながら大きく手を振り、先程よりも少し大きめの声を発した。


受け付けの女性

『如月警部!』『お客様が、お見えになってますよ!』


葵と白華が振り返ると、息を切らしながら走ってくる、如月警部の姿があった。


如月警部

『はぁ・・・はぁ・・・お待たせ!』

『ゴメン、少しだけ時間頂戴!』『お茶、飲んでくる!』


そう言うと、如月警部は息を切らしながら、廊下の奥へと歩いて行った。


少ししてから、『君達も、こっちにおいで!』と廊下の奥の方から如月警部の声が聞こえてきた。


葵と白華と朱珠の3人が声のする方へ向かうと、缶コーヒーを飲みながら、販売機の前で如月警部が立っていた。


如月警部

『ゴメン!』『待ったでしょ!』


そう言うと、如月警部は販売機にお金を入れ、にっこりと微笑みながら『順番に選んで!』と葵達に声を掛けた。


林藤 白華

『大丈夫ですよ!』『私達別に・・・!』


そう白華が話しているのを遮る様に、

『ええの♪』『どれにしようかなぁ〜♪』と満遍の笑みで朱珠が販売機の前に立っていた。


林藤 白華

『バ・・・バラちゃん!』


綾女 葵

『たまには、甘えさせてもらいましょ。』


そう言うと葵も朱珠の隣に立ち、販売機を眺め始めた。


林藤 白華

『リ、リーダーまで!』


そんな光景を眺めながら、

『良いから良いから!』『遠慮しないで!』と如月警部は、白華にも選ぶ様に、販売機の方へ手を差し示した。


林藤 白華

『すみません!』『有難う御座います!』


そして、葵はミルクティー、白華は微糖のコーヒー、朱珠はミックスジュースを、如月警部に買ってもらったのであった。


綾女 葵&林藤 白華&神原 朱珠

『頂きます。』


如月警部

『どうぞ!』


笑った如月警部は、とても顔が可愛らしい顔立ちをしていた。


朱珠は葵の耳元で嬉しそうに、小声で話し始めた。


神原 朱珠

『なぁなぁ、この警部さん男前やなぁ〜!』


綾女 葵

『随分と嬉しそうね。』


神原 朱珠

『へへへ。で、何歳やって言うた?』


綾女 葵

『確か23歳だったと思うわ。』


神原 朱珠

『ええやん、ええやん!』


綾女 葵

『残念ながら、婚約を前提で無い限り、あなたには無縁な相手よ。』


神原 朱珠

『せやな!』


そう言いながらも、朱珠は笑っている。

そんな話しをしている2人を他所に、白華が口を開いた。


林藤 白華

『ところで、今回の調査のことについて、お聞きしたいのですが・・・。』


如月警部

『そうそう、一つ頼みたいことがあってね。』

『先月海沿いのトンネルで2回巻き込み事故が、あったんだけど分かるかな?』


林藤 白華

『確かどちらも赤信号に変わっているにも関わらず、ブレーキを踏んだ痕跡が見当たらなかったんですよね。』


綾女 葵

『周囲の人の話しでは、運転手が事故を起こす寸前に、体調を崩して意識を失った訳では無く、自ら突っ込んで行ったように見えたって話よね。』


神原 朱珠

『あの2人亡くなった事件のこと?』


綾女 葵

『多分、バラちゃんの言っている事故で合っていると思うわ。最初の事故で1人、後の事故で2人亡くなっているから。』


神原 朱珠

『えっ!』『て事は何なん⁈』

『もしかして2件共、同じ霊体が引き起こしたって言うん?』

 

如月警部

『まだ、ハッキリとは分からないよ。ただ実はあれ以降も、死亡者は出ていないものの、その近辺で同じような事故が多発しているんだ。』


そう言うと、如月警部は眉を顰めながら話しを続けた。


如月警部

『それで2つ奇妙な共通点も見つかったんだ。1つ目は、事故を起こしたのは全員、結婚していて子供が産まれたばかりの男性ということ。2つ目は、全ての事故が18時25分から35分の間に起きていると言うこと。』


如月警部の話しを聞いた後、葵は時計を眺めながら、『こうしては、いられないわね。タクシーを手配してもらって、早く海岸へ向かいましょ。』と言葉を発した。


林藤 白華

『そうだね。ここからだと早くても20分くらいは、かかるからね。』


如月警部

『タクシーなら呼ばなくても大丈夫だよ!』

『blancとはいえ、君達高校生に全て任せるのは心苦しいからね。僕も一緒に同行する。』


如月警部は、飲み干した缶コーヒーの空き缶をゴミ箱へ捨てると、『部長に話して来るから、君達は少しここで待ってて!』と言い残し、階段を駆け上がっていった。


葵に不安そうな顔で近寄る朱珠。

 

神原 朱珠

『なあ、私達も事故に巻き込まれたりせぇへんよな?』


綾女 葵

『「大丈夫」とも言えないけど、安心して。』


そう言うと、葵は茜に白と黒が半々に彩られた球体を差し出した。


綾女 葵

『はい。お守り。』


球体を受け取る朱珠。


綾女 葵

『その球体は、いつもあなたを守ってくれるはずよ。今までだって、あなたを守ってくれたでしょ?』


その問いに、朱珠は笑顔で『せやな。』と返した。

そんな2人のやり取りを、白華が笑顔で見守っている中、階段の方から物凄く大きな音がした。


慌てて朱珠と白華が階段の方へ向かうと、階段を滑り落ちた如月警部の姿と、同じく音を聞き駆けつけた、受け付けの女性の姿があった。


林藤 白華&受け付けの女性

『大丈夫ですか!』


如月警部

『痛たたたた・・・。』


林藤 白華

『病院へ行った方が良いんじゃないですか?』

『私達、タクシーで行けますよ!』


腰を抑え苦笑いを浮かべながら、如月警部は『大丈夫、大丈夫!』と答えた。


受け付けの女性

『無理しないでくださいよ!』


そんな会話をしていると、口元をハンカチで拭きながら遅れて葵がやって来た。


朱珠は葵に近寄り、小声で『ほんまに、この人と一緒で大丈夫なん?』と不安そうな顔で尋ねてきた。


綾女 葵

『私達が居れば、大丈夫なんじゃないかしら?』


葵は白と黒に彩られた球体を、ポケットから出して朱珠に見せた。


神原 朱珠

『嘘やろ!』『私達が守る側なん?』


この後、葵、白華、朱珠の3人は、おっちょこちょいな如月警部の車に乗り込み、例の海岸へと向かったのであった。

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