まなざし

 破壊音に耳を覆われているときだけ、私は私のもと

 に帰って来る

角の落ちた木材が互いを殴り合うような鼓動

息継ぎをする間も与えず、所在も不在も軽蔑していた

 過去が、頭頂部から足の先までを、呼吸も敵わない

 ほどの密度で埋め尽くす

 眼球の裏側に閉じ込めたうなり声 四肢の末端すら

 喜びに震える

 疲労した肉体に諦観が許されて

 連続が視界の輪郭をぼかして

融けていく 反復は未だ、終わる様子もない


 手の届かない場所で起こる全てを慈愛の眼差しで見つめてしまえることは裁かれるべきだった 沈黙も破壊も重ねれば見つからなくなるような優しさを有していた 眼前に現れた棘に心を奪われた瞬間全方向から実体をも失ったか細い針に抱擁されている。彼らは私を軽蔑している。それだけで、それだけが、私を許した


つたわらない言葉が

乾いた口のなかを、四周半、

這いずるあいだに

全てが崩れ去る時空を認めた。

彼らの笑い声が轟音と化して

希望の果てへと木霊している

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詩たち オークラ @okra_ocl

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