ピース

澄んでいる

無敵

潔いほどの幸福


 睫毛の影に乗せた新しい光が、花嫁のヴェールとなって帰り路を包む、欲望が、すべて正しいものになる。その瞬間がいつだって嫌いで、だけど呟きなんて相乗効果にしかならないから黙って墓に入った。コンクリートの天井が白い糸の張り巡らされた世界と鼻先とを分かつ。途切れることのない、優しい、優しい文脈を、精一杯引き延ばした、いつか見た、ここはかがみの部屋。


(放して。)


 夕方を乱反射する淡い空気は純度マイナス四十パーセント。一昨日クローゼットから出したジャケットの襟のあたり、首の付け根のあたりから滲んだ悲劇とか虚無とか平和とか愚痴とか全部が。空気に溶け出してでもあっという間に薄れた。濁らない。拒まない。飽き足りない。私たちを縫い留めたまま、離さない


(放さない。)


 跳ねまわる音のなかで句読点を吐き出していく。相槌は不純でどこを切り取っても尊く、確信は日々に囲まれてどうしても時めく。指先の冷たさはだれのためなの?喉を離れて声は還った。しがみつく肉体を振り払い。収束する糸の先へと


もし君が、海や空は永遠の切れ端なんだと言うのなら

いつまでも寛容に、美しさに、無知でいて初めて健全なんだと言って泣きたい

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