第8話

主人公の名前が間違っておりましたので修正しました。

読み難くてすみません。

あとお金を銅貨、銀貨、金貨ではなく『バラン』という通貨にしました。





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追い縋る商人ギルド職員さんを完全無視したオーナーさんは、私の手を引いて商人ギルドの建物を後にした。

途中案内してくれたネリカさんに手を振れば、声には出さなかったけれど「ごめんね」って口を動かして謝ってくれた。うん、やっぱり良い人だ。


そうしてやって来ました冒険者ギルド、酒場も併設されてるらしくて建物の外からでも昼間から赤い顔をした人が騒いでいるのが確認出来て………ちょっと一人では近付きたくない雰囲気だった。


「ようこそ冒険者ギルドへ」


淡々とした口調でそう言ったのは受付として立っているお姉さんの一人だった。

その視線は鋭くて、眼鏡が似合っていて仕事が出来そうなクールビューティな印象だった。


「口座を開設したいのだが――――」

「口座の開設ですね。冒険者登録はしておりますでしょうか?当ギルドの口座は冒険者登録が無ければ開設できません。他にも口座開設費用として予め100バラン必要となりますが、ご用意はありますでしょうか?」


「すまないが冒険者登録は二人ともしていなくてね、私ではなくこの子だけを登録するのとあとは口座の開設も同時にお願いできるかな?保証人が必要であれば私がなろう」


オーナーさんが私の背を押して前に出すと、身分を示す様に商人ギルドのカードをお姉さんに見せた。


「冒険者登録及び口座の開設ですね、承りました。身分証の確認を致します」


そう言ってお姉さんは何かレンズの無い虫眼鏡か金属探知機みたいなものをオーナーさんの身分証にかざすとそこから「ピッ」と音がして輪っかの部分が緑に光った。


「………ありがとうございます。では其方のお嬢さんにはお名前と住所、あとは何歳かを教えてもらえるかしら?」


私が答えた事を登録用紙にスラスラと書き込んでいくお姉さん。


「お名前はユニさん、歳は10。住所は………」


そこでお姉さんの手が止まった。


「ユニさんにお姉さんは居ない?」

「はい。姉が三人居ますけど?」

「………そう」


何?もしかして姉のどれかがお姉さんに迷惑をかけたのかな?


お姉さんはテキパキと登録用紙を何かの機器(小型のコピー機みたいなもの)に通すと、その機器の下部からカランと音を立てて前世で言うドッグタグみたいなものが滑り落ちた。


「はい、これがユニさんの冒険者証になります」


そう言って赤銅色をしたプレートを渡される。


「保証人には私がなる。口座の開設費用は此処に――――」


オーナーさんがお金を渡すと、お姉さんが確認をしてあっさりと私のお給料口座は開設されたのだった。


「お金を引き出すには必ずその冒険者証が必要になるから失くさないように、再発行も出来るけれど都度お金がかかるから」

「はい。ありがとうございました!」


商人ギルドとは比べ物にならないくらいの速さだった。

まぁあっちは余計な話が長過ぎただけなんだけどね。


冒険者登録が済んだことで簡単な説明を受けた。

私のランクに応じた依頼を受けられるようになったのと、併設された酒場での飲食がランクに応じて割引されるらしいこと、あとは――――。


「2階の資料室?」

「冒険者登録が済んでいれば誰でも利用可能な部屋になります。利用は朝の8時から夕方5時まで、ランクに応じて本の貸し出しも可能です」


冒険者として必要な知識を身に着けるという目的で設けられた施設みたい、この世界の知識が圧倒的に足りてない私としては少し興味がある。


「資料室を見てくるかい?」

「良いんですか!?」


私が興味津々なことがバレてたみたいで恥ずかしくなる。


「今日は最初から店の方には休みと言ってあるから構わないよ。私も所用を済ませて来よう、5時ごろに迎えに来れば良いかい?」

「ありがとうございます!」


オーナーさんはやっぱりとっても良い人だ。


「………大変失礼だとは思いますが、ユニさんは本が読めるのですか?」

「えっと難しい文はまだ読めませんけど、ある程度なら――――」


基本的な字はこの世界の人は皆結構読めるんだけどね?新聞とか読んでると時々なんだけど、古い言い回しだとかがまだ平然と残ってたりして上手く読めない部分があったりするんだよね。

大人になると自然とニュアンスで理解するらしいんだけど、それだと何だか気持ちが悪くってレンブラントさんとクラエットさんにリタと一緒に教わっている。

時々ガストンさんも賄いを食べてるときとかに教えてくれる。

本なんて新聞よりも使われてる古い文法だとかが生き残ってるだろうから、お姉さんはそれを心配してくれたんだろうね。


「………驚きました。姉の方々とは違うのですね」

「姉たちを知ってるんですか?」

「ええ。ある日突然やってきて、此処で受付嬢をさせろと――――一応試験も行ったのですが誰一人此方が設定した合格基準に満たず………」


あの姉たちは………何をやってるんだろう。

冒険者ギルドの顔とも言える受付嬢に、飛び込みでなろうとするなんて………。


「姉たちがとんだご迷惑を――――」

「いえいえ。貴女も苦労されてるようで――――」


お互いに頭を下げ合って、そのあとオーナーさんとは別れてお姉さんに資料室に案内してもらった。

少しだけ湿気のこもったような臭いはあるけれど、日当たりは悪くないし窓もあるから開ければそんなに気にならなくなるかな。


「あらシスティス、可愛らしい子を連れてるわね」


資料室にいたやけにキラキラしたお兄さんが笑顔で此方に声をかけてきた。


「丁度良かったです。ユニさん、資料室で分からないことがあれば彼に訊くと良いでしょう。マードック、此方は先ほど冒険者登録を終えたばかりのユニさんです。色々と案内と説明をお願いします」

「はじめましてお嬢ちゃん。アタクシはマードックよ、よろしくね?」

「あ、はい。はじめましてユニです。よろしくお願いします」


「ふぅん………」


頭を下げた私にマードックさんは良くわからない声を漏らした。

何かめっちゃ見られてるんだけど?

無駄にキラキラしたお兄さんに見られるとか恥ずかしすぎる!

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