第31話 ワープゲート襲撃(2)
〔ワープエネルギー感知。位置はゲートより上方です〕
「またっすか?」
「バンデットか、一般船か」
〔発せられているシグナルは――、帝国軍の艦隊です〕
おそらく、ワープゲートの防衛についている艦隊が呼んだのだろう。駆逐艦級が一隻に準駆逐艦級が二隻。後はフリーゲート級が六隻かな。モニターに映る艦船には紋章が装飾されており、一目で帝国の艦船だという事がわかり、ほっと胸をなでおろす。
だが、──その安堵は、一瞬で吹き飛んだ。
彼らは状況を把握しているのか、ワープゲート周辺に群がるバンディットへと容赦ない砲撃を開始した。その攻撃は加減を知らず、
その間も、オープンチャンネルに流れる通信からは、怒号が飛び交っていた。
『おい、やめろ! ワープゲートを壊す気かよ!』
『ゲートに主砲なんて撃つんじゃねぇよ! お前ら、それがどれだけ危険か分かってんのか!?』
『数がいるからって、軍の駆逐艦が宇賊なんかに全力攻撃とか笑えないぞ! 本気でやる気か!』
『おい、ジャミング何とかしろよ!! こっちは通信すらまともにできないんだぞ!!』
今しがた飛んできた軍の艦船から放たれた攻撃に対する通信だろう。現在の通信状況は最悪で、周囲一帯に強力な
中には真剣な抗議の声もあるが、その一方でヤジや煽りのようなものも紛れており、混沌とした状況が続いていた。それらがどれだけ状況を悪化させているかに関わらず、攻撃を続ける軍艦隊は、これらの通信を一切取り合う気配を見せていない。その苛烈な攻撃は、まさに目標の殲滅だけを目的としているかのようだった。
ともかく、これまで警備に当たっていた軍の艦船は、バンディットがワープゲート付近に移動したため、攻撃を思うように行うことができていなかったらしい。その影響で、火力を抑えた迎撃を行っていたようだ。それでも、コルベット級の艦船を破壊する程度の攻撃は継続して行われていた。
本来であれば、時間をかけてじっくり追い詰めていけば、バンディットの艦船を完全に壊滅させることも可能だったはずだ。だけど、状況が変わったことで、計画通りに進めるのは難しくなったように見える。
さらに呆れたことに、彼らは帝国軍艦同士でオープンチャンネルを使い、堂々と通信を始めた。
『
『ワープゲートの防衛は我ら第二十八機動隊の管轄だ。理由はどうあれ、ワープゲートへの過度な攻撃は国際法上のルールを犯すことになる。今すぐやめるんだ。それと、今すぐオープン回線を落とせ』
『貴様の艦隊が後続を進めないから、遅々として予定が進まぬではないか。だから我ら第三十二機動隊が手伝ってやろうというのだ。お前たちのやり方では時間が掛かり過ぎる。ジャミングが解けないのも、お前たちが
『我々をのろま呼ばわりするか!? 時間が掛かっても、安全に配慮するのが我々の任務だ。それこそ
『皇帝陛下の権威を笠に着るとは不届きな! 何が慎重居士だ! それをのろまと呼ぶのだ! ワープゲートがその程度で壊れるものか。手際の悪いお前たちに見本と言うものを見せてやっているのだ。見ろ、宇賊など物の数にならん』
なんだこれ。もめてるというか、口論してる? しかもオープン回線で。いくらジャミングが強いからと言って、同じ軍のミリタリーシップがつまびらかにオープン回線で会話をするというのはどういうつもりなのだろうか。
通信の内容には、もはや呆れを通り越して笑うしかない。軍艦同士でのやり取りは、まるで幼稚な言い合いのようだった。それぞれが自分たちの正当性を主張し合い、互いに
しかし、その言葉の端々には、互いに譲れない信念やプライドが見え隠れしていた。片方は迅速かつ徹底的な殲滅を主張し、もう片方は慎重な対応とゲートの保全を優先する。どちらが正しいかを問うのは難しいが、その通信を聞いているこちらとしては、これが単なる勢力争いの縮図のようにも感じられる。
「目的が同じなのに、やり方がひどいというか。ワープゲートは故障ならまだしも、破壊されたら予定自体が
「それこそ、既存の防衛艦隊の言い分の方が正しいと思うね。ゲートが損傷するより、安全を取ってくれた方が結果的に早いよ」
ブルダとヴィースがもっともな意見を述べる。その意見には全面的に同意するし、今からでも後から来た艦隊には下がってもらいたいところだ。
状況が悪化する前に誰かが冷静に指揮を取ればいいのに――、そう思いながらも、自分にできるのは静観し、このカオスが収束に向かうのを祈ることだけだった。
〔ワープゲートに後続の艦隊からの攻撃が当たっています。ワープゲートのシールド消耗率が観測できるほど上がっています。観測した消耗率14%の見込み〕
「この短時間で削れていい被害じゃない。ほんとにやめてくれよ……」
「代わりに、バンディットの数が四十を割ったっす」
確かにバンディットの数が減っているのは喜ばしいことだ。しかし、戦いが終わる頃にワープゲートが無事なのか、甚だ疑問だ。援軍として到着したはずの部隊が、守るべきワープゲートに損傷を与えるなんて、あってはならない。そう信じたいが、この状況では簡単に楽観視もできない。
今も周囲の通信には抗議や怒号が飛び交っており、その中に混じりたい気分になるのも正直なところだ。ただし、こちらが何を言ったところでこの状況を止められるわけでもない。今はただ、事態を静観し、これ以上の被害が出ないことを祈るしかないわけだが。
「バンディットが離れたことだし、フリーゲートは帰艦。いつでも発進できるように簡易整備して待機」
「了解、帰艦信号送信。帰艦後は簡易整備で待機」
ヴィースの通信でフリーゲートが戻ってくる。ジャミングが酷いと言っても、短距離であれば通信は可能のようだ。こちらで通信が通じているのに軍の艦船は何故オープン回線を使用したのか。何か別の意図でもあったのだろうか?
そんなことを考えていると――。
〔ワープエネルギー感知。位置特定中――、帝国軍艦隊の後方です〕
「今度は何?」
「発せられているシグナルに登録データなし、所属不明の艦隊だよ」
ジャミングの影響か、アルクスの観測機が少し遅れて所属不明の艦船を捉えた。
驚いた僕らは、すぐにモニターを確認した。これまでワープアウトしてきたバンディット船とは異なり、帝国の駆逐艦クラスと同等の艦船が次々と出現する。そして、その艦隊は、帝国の艦船や警備船に対し、一切の
その攻撃は容赦なく、凄まじい破壊力を
しかし、突如現れた所属不明の艦隊は、一般船には攻撃を仕掛ける様子はなく、帝国艦を集中的に狙っているように見えた。
「一般船には攻撃が
「ただ、仕掛けようと近づいた一般船は攻撃されてるっす」
「近づけば容赦なく撃たれるってことか。どちらにしろ、攻撃されたらたまらない。ヘイトを買わないように低速で距離を取ろう。それにしても、駆逐艦並みの戦闘艦に、よくも一般船で仕掛けようと思ったな」
「連中の気が変わって、こっちに矛先を向けられたくはないね」
「まったくっす」
〔帝国艦隊、新たに現れた所属不明艦隊を主目標に切り替えるようです〕
ワープゲート付近に出現した艦船は八隻だった。その艦船群は、軍の駆逐艦クラスと同等か、それ以上の規模を誇り、全長700m超えの巨艦だ。あんな規模の艦船を運用する宇賊など、滅多にいるものではない。それが、同クラス艦が三隻も同時に現れるとは、――異常事態だ。
駆逐艦級以外にも、全長600mほどの大型艦が五隻。その艦隊は体勢を整えつつある帝国軍と激しい撃ち合いを始めた。さらに、先に防衛していた帝国軍の艦船も戦列に加わり、本格的な艦隊戦へと発展していく。
「アルクス、戦力分析はできる?」
〔帝国軍側の戦力は、二部隊が合流し、駆逐艦級二隻、準駆逐艦級四隻、中破以上を除くフリーゲート級七隻。対する所属不明艦隊は、駆逐艦級三隻、準駆逐艦級五隻。数の上では帝国軍が優勢ですが、敵の強襲により損害が拡大中。敵の武装が不明なため、正確な戦力評価は困難ですが、現状では敵側がやや優位に立っていると推測されます〕
「警備船も立て直して、現れた艦船に攻撃してるっすよ」
「戦闘エリアが拡大しそうだ。シールドを二段階強化、射線に入らないよう戦闘エリアからさらに
〔シールド出力アップ。ワープゲートより後退します。現状ワープゲートのシールド消耗率34.2%の見込み〕
ワープゲートの消耗率が急激に上昇した。本来、ワープゲートは交通の要であり、物流の動脈とも称される。新設されたばかりで一時的に物流が少ないとはいえ、莫大な資金と資源、技術、そして時間を費やしたゲートを損傷させていい訳ではない。
やってきた艦船は、帝国軍の死角を突く形で強襲を仕掛けた。その結果、帝国軍はワープゲートを背にした不利な態勢で戦わざるを得なくなった。ゲートを防衛しつつ、必死に応戦しているが、戦況は厳しさを増している。
「今更なんすけど」
「ブルダ、どうかしたかい?」
「あのでっかい艦船に積んでるの、多分ミリタリーグレードの武装じゃないすかね? そうじゃなくても、軍の艦船に見て取れるダーメージを出してるってことは、一般で手に入る最上位モデルのはずっす。それを、あれだけの艦隊で揃えるなんて……」
ミリタリーグレード──いわゆる軍が主に使用する装備のことだ。一般には流通せず、市場に出回ることのない最高クラスの武装であり、本来なら宇賊が持っているはずがない。
ブルダが言いたいのは、そのミリタリーグレードや最上位モデルの武装を、一部ならまだしも、宇賊が揃えて装備しているのは明らかに異常だ、ということだろう。
もし入手したのだとすれば、どこかの宙域で放棄されたものを回収したか、ブラックマーケットで流れていたか……。考えたくもないが、軍のどこかから横流しされた可能性もある。
だが、もしそのどれでもないとしたら――。
「軍から周辺宙域にバンディットへの攻撃援助要請が出されたっすよ。目標は、新たに現れた大型艦を含め、バンディット認定されたすべての敵マーカー」
「そうなるか。仕方ない、タレットのみで対応する。他の艦船も参加してくるだろうから、射線を防がない様に移動。射撃管制はゲートから遠いバンディットを攻撃」
〔行動を開始します〕
「アルクスはでかいから、あんまりヘイトもらうのは避けたいっすね」
「そうなんだよ。群がられたら厄介だしね。まあ、他の艦船の攻撃が敵のヘイトを引き受けてくれるさ」
ずるいなんて思わないでほしい。アルクスの船体は大きいが、駆逐艦クラスの攻撃――、それもミリタリーグレードの武装で攻められた日には、洒落にならないほどの
開拓の出発前に被害を受けたくはない。それにしても、艦隊戦の余波がものすごい。
「戦況は?」
「苦戦してるみたいっす。火力で押されてるのもあるけど……、敵の連携がすごいっすね。まるで長年訓練を積んできた正規軍みたいな動きっす。やっぱり、武装もミリタリーグレードと見て間違いなさそうっす」
「純粋な殴り合いじゃ分が悪いか。戦力のことはひとまず置いといて、フリーゲートの出撃準備だけ進めておいてくれ。最悪、あれとやり合う羽目になるかもしれない」
「まだ出さないのかい、キャプテン?」
「今出したら、敵と味方の間に挟まれて格好の的になりかねない。まずは敵を正面にしながら、ゲートとの距離を取る」
「あ、帝国の準駆逐艦が被弾しちゃったっすよ。撃ち負けてる!」
「帝国側の準駆逐艦、二隻が被弾。シールドが限界に近いみたい。敵側も多少の被害は出てるけど、軽微に見えるね」
「装甲で持たせてるけどきつそうだ。敵は隊列の組み換えで被害を最小限にしている」
「あの艦隊、本当にただの宇賊なんすかね?」
〔本船より後方から、他グループ船団の発砲を確認。射線が無数にあり、後方への移動が困難です〕
「周りから撃たれるのはごめんだ。でも、微速でいいから移動は続けてくれ」
「キャプテン、後ろから『邪魔だからどけ』って通信が来てるね」
「どこにも行き場がないし、こっちは下がるしかないんだよ。ゲートから遠ざかってるってことは伝えておいて」
血気盛んな船もいるもんだ。何なら、こっちを押しのけてでも前に出てくれていいくらいだ。
◆所属不明側の視点◆
帝国の艦船など恐るるに足らず。
奇襲とはいえ、目の前の帝国の艦隊に被害を与えて作戦の成功を確信する男がいた。駆逐艦艦隊が二部隊いたことに多少の戸惑いはあったが、奇襲故の先制攻撃が決まった形となる。
「ザランガ中尉、宇賊共の数が半数を切っております」
「そうか、連中には前金をたんまりと払った。高度な情報や高級品の
アンダーグラウンドで依頼を受けてきた連中はこぞって報酬額に喜び跳ねた。これ以上の事はできんと言えば文句はないと返してきた手前、それで死んでも自己責任だ。
「しかし、コルベット級程度とはいえ、あれだけいたのにも関わらずワープゲートの耐久値も削れんとはな」
「警備や軍の注意を引いてくれただけでも十分でしょう。それ以上は連中には荷が重いかと」
「それもそうか」
今回の襲撃は、アドラン帝国による未開拓宙域の開拓事業を遅らせるための妨害工作だ。本来、このセクターに進出するはずだったのは我々ルーズガ連邦だった。しかし、先の諸外国との小競り合いで戦力を消耗し、泣く泣く断念した。
そこを
しかし、今回は好機だった。この開拓事業の情報が広く出回っていたおかげで、妨害の準備を進める時間があった。もちろん、この程度の妨害工作をしたところで、帝国全体にとっては大した痛手にはならないだろう。だが、ワープゲートの損害となれば話は別だ。修復には莫大な資金と時間を要し、開拓計画に遅れが生じることは避けられない。
今回の作戦の最終目的は、ワープゲートのエネルギーを暴発させ、周囲の艦船を予測不能な宙域へ弾き飛ばすことだ。成功すれば、帝国の威信は損なわれ、ワープゲートの安全性にも疑問が持たれるだろう。そうなれば、この開拓事業は延期、あるいは最悪、頓挫させることも可能になる。そのために、我々は大規模な宇賊の買収を行ったのだからな。
「
「完了しております。ご指示いただければ、いつでも」
「よし。帝国の駆逐艦艦隊に全力攻撃を仕掛けた後、ワープエネルギーに
「はっ!」
帝国の駆逐艦を
★
バンディット艦隊と帝国軍の戦闘は
帝国軍の艦船は、シールドを失ったことで装甲に直撃する攻撃が増え、艦体の一部は黒く焦げ、歪みを
周囲の戦闘が激化し、火花と
「戦闘エリアからは抜けたか? ミリタリーシップ同士の殴り合いなんて、間近で見れるもんじゃないけど、見たいとも思わないよ」
「そうすっね。それにしても、流れ弾が直撃して来ないのが救いっす。あれが当たったら、もう笑えないっすよ」
「ほんとそうだよね。はあ、キャプテンが夢見る男子じゃなくて良かったよ。"戦場のロマン"とか言い出す人だったら、今頃どうなってたか」
「いやいや、普通に自分たちの船を傷付けたくはないだろ。ロマンもいいけど、現実はシャレにならないから」
夢見る男子ってなんだ? ああ、あれか? 危険に対する認識が甘く、ロマンや好奇心だけで行動しちゃうタイプを皮肉った言葉だったはず。
戦場を見てみたいとフラフラ近づいて、想定外の危機に直面して
たしか、ネット上で"こんな奴いたわ"みたいなエピソードがシェアされて広まったんじゃなかったか。ちょっとコミカルな響きがあるけど、実際の現場だと笑えない状況だったりするから、この表現が使われるたびに、どこか"教訓めいた
「そんなのよく知ってるね」
「みんな暇なときはスターネットに接続してるからね。時間があれば、その手の娯楽情報だっていくらでも拾えるよ。ほら、話題に困らないようにって感じで」
「自分たちは、人格が芽生えたときから、教育の一環として自由にネットへアクセスさせてもらってたっすよ。まあ、遊びすぎると怒られましたけど」
「へー、自由にできる反面、ちゃんと規律もあるんだね。趣味や興味はみんなバラバラだと思ってたけど、そういう方針で統一されてたんだ」
「でも逆に言えば、その自由があったから、ボクらみたいに何にでも興味持つようになったって感じだね」
「なるほどね。みんながそうやって育ったなら、それぞれの個性が出るのも納得だ」
〔ワープゲート周辺のバンディット、残存数が三十を割りました〕
戦闘エリアから距離を取ったことで、雑談を
帝国の準駆逐艦が被弾した辺りで、敵に畳みかけられるかと思われたが、駆逐艦同士の撃ち合いで帝国軍はしぶとい意地を見せている。連携の取れた砲撃と見事な指揮によって、戦線を辛うじて維持しているようだった。
状況は刻一刻と変化している。互いのダメージコントロールが優れているのか、どちらも致命的な一撃は避けている様子だ。それでも、次第に被害が増え始め、爆発の頻度とともに双方の艦船の
ふとレーダーに視線を移して確認すると、バンディットの艦数が目に見えて減少しているのがわかった。アルクスの言う通り、残存数は三十を下回っており、その勢いが失われつつあるのは明らかだった。戦況の流れが変わりつつあることを、全員が無言で感じ取っていた。
「向こうも激しいな。ミサイルやら実弾やら使ってるみたいだけど、補給とか大丈夫なんだろうか」
「この機会に、バンディットの討伐実績か、懸賞金狙いなのかもしれないね。戦闘って、後の名声やお金に繋がる場合も多いからさ」
「それって、周りの協力してる船と折半なんだよ? それで元が取れるとは到底思えないんだけどな。弾薬だって安くはないだろうし」
討伐の実績が付くと言っても、実際には他の船と遠くから共同で攻撃しているだけだ。直接撃墜したわけでもない状況では、撃墜数なんてカウントされないんじゃないかな。そんな考えが頭をよぎった。
「それでも、どこかでやってやった感が必要なんだろうさ。戦場じゃ自己満足だって重要らしいしね」
ヴィースの言葉に、そんなものかと思ってしまう。
さておき、下手にヘイトを稼いで襲われるより、現状は静観しておく方がいいだろう。この位置からバンディットに攻撃をしても、効果的なダメージを与えられるとは思えない。それに、何か言われたら、それっぽい理由くらいはいくらでも考えつく。とにかく、今は注意深く状況を見守るべきだ。
帝国艦隊とバンディット側の戦闘艦が、互いに最適な距離を探り合いながら戦闘を続ける中で、それぞれの砲火が交差し、レーザーの軌跡が空間を照らしていた。そして、状況が静かに
〔バンディット側の戦闘艦で、急速にエネルギーの集中を始めています〕
「大型兵器でも使うんすかね?」
「勝負を決めるつもりかな?」
モニターにはバンディット側の戦闘艦に目立った変化は見られなかったが、アルクスのセンサーは何かを感知したのだろう。これまで以上にバンディット側の攻撃が激しさを増し、状況は緊迫感を帯び動き出した。
「うわ! 大量のミサイルっすね! 数が多すぎる……!」
「それだけじゃない。ミサイルに紛れて、何か別のものを撃ち出したみたいだよ」
「なんだろうな。……センサーで詳細を確認できるか?」
〔確認中です。高エネルギー反応を検知。通常のミサイルではない可能性があります〕
「高エネルギー反応? まさか、EMP兵器とかじゃないだろうな」
「それならまだいいっすけど、もっと厄介なものだったらどうするんすか?」
その直後、モニターが間を置かずに白く光り、ホワイトアウトした。視界が真っ白に染まり、全員が息を飲む瞬間――。
〔警告! 何らかの攻撃によりワープエネルギーが爆発したようです。エネルギーの
鋭い警告音と共にアルクスが状況を伝えるが、その声も途中で途切れ、艦内は異様な静寂に包まれた。次の瞬間、全身を突き抜けるような激しい衝撃と共に、僕は強烈なめまいに襲われる。
「どういう――、ぅあっ!」
その声を最後に、僕の意識は深い闇の中へと飲み込まれていく。混乱と不安が渦巻く中、僕の意識は静かに断ち切られた。
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