作戦会議

 「アイ王国には、早馬を走らせます。よく決断してくれました」

 ドン・マッジョは、手を広げて歓迎のポーズをとって言った。

 「さあ、この作戦を完璧に仕上げるために作戦会議と致しましょうか」


 4人は、ドン・マッジョの提案にのることにした。反対していたショウを動かしたのは、ケンジだった。ケンジは直感的にネオバーンを倒す事に集中した方が良いと考えていた。

 エックス、それからゼットの動向は気になるが、元凶である大魔王ネオバーンを倒すことがこの世界が平和になる絶対条件だと考えていたからだ。ネオバーンがほぼ単独で動いている好機を逃すべきではないと訴えた。

 その事を時間をかけてゆっくり3人に説明をした。言葉がうまく見つからない時は、繰り返し同じような事をいうので時間が掛かった。

 ケンジが話し終える時、ショウは一筋の涙を流していた。すぐに拭き取られたが、ケンジは間違えなくそれを見た。

 「まあ、ケンジがそういうなら仕方ないわ。いいわよ。ドンの提案にのってあげるから」

 そう言い残してショウは先にひとりで丘を下って行った。



 ドン・マッジョの提案は、全て計画通りに事が進んだ場合、最後に冥界門を通るネオバーンに対してドン・マッジョの私設兵団一千名が襲いかかる。金にものを言わせて揃えた猛者揃い、簡単にはやられない。ネオバーンは、近衛兵約100体、移動用トーチを担ぐ魔物300体に囲まれているから、担ぎ手である魔物から倒し出張ってきた近衛兵を少しづつ囲んで倒して場を混乱させる。そして、ネオバーンの周囲が手薄になったところを、ケンジ、ショウ、タージ、イヂチの4人で仕掛けるというものだ。

 「あなたの兵隊一千名と私達は、冥界門近くでしばらく待機しているっていう事よね?状況を確認しながら、タイミングを見計らって出て行くって感じね」

 「ええ、そうです。ただし、難しいのが今まさに続々と集まる魔物達の目に留まらずに、千人もの人間をどうやって冥界門まで移動させるかということです。見つかれば袋叩きです。豪魔地帯に入ってからは、馬を下りて、足を使って行動してください。全員がまとまって動くのは危険でしょうから、隊長と最終の打合せをしますが、いくつかに部隊を分けて送るつもりです。ちなみにここから冥界門まで1日半掛かります」

 イヂチがすぅーと手を挙げた。

 「ん?何でしょう」

 「・・・・・・」

 イヂチは、タージの方をチラッとみて口を動かした。

 「へぇー、それは便利ね」

 タージは少し驚いたように首を縦に振って言った。

 「彼ね、魔法で移動できるそうよ。ピュンとね。うんうん、うん?50名?OK。一度に50人くらいなら行けるって」

 「なんと!それはいい」

 ドン・マッジョは、目を見開いて言った。

 「ん?えっ、そう。ああ、彼ね。その魔法が使えるには一度行った所じゃないとダメだって」

 「うーん。そうですか。でもそれが出来ればリスクはかなり減らせそうだな」

 「じゃあ、行ってこようよ。時間もまだあるし」

 タージはイヂチの顔を見て、それから全員の顔を見て言った。

 イヂチは頷いた。

 「よろしいです?」

 ドン・マッジョは、お伺いを立てる。

 「待って」

 ショウが言う。

 「私も行くわ」

 ケンジが驚いてショウをみる。

 ショウは、手を組み呪文を唱えた。

 ショウの周りを薄いモヤが掛かる・・・・・・、次第にショウの姿は風に攫われた綿毛のように消えて、ショウの座っていた場所だけぽつんと空いてしまった。

 「どう?」

 空間からショウの声が響く。

 「おお、素晴らしい・・・・・・」

 ショウは、パッと姿を現す。

 「走ったりは出来ないけど、使えるでしょう。てっことで、じゃあ私も付いていくわ」

 「ショウが行くなら、僕も行くよ」

 ケンジが言うと、ムッとした表情でショウが睨む。

 「ケンジ王子、ちょうど良かった。実は王子には、別にお願いしたい事がありまして」

 「えっ、僕に・・・・・・」

 きょとんするケンジ。

 ドン・マッジョの不適な笑みは、ケンジを不安にさせるには充分だった。

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