第28話 週刊八龍ポップより悪意を込めて

【九月第一月曜日】

 八龍にも月曜日は訪れる。いつも通りに起きた睦千はあくびをしながら、顔を洗い歯を磨く。歯を磨きながら玄関の靴と冷蔵庫を確認して、朝食を考える。ポテサラが残っている、そう言えば昨日の夜残しておいたのだ、天才・昨日の自分。ポテサラとハムと卵を取り出し、口を濯ぐ。それから再びキッチンへ戻り、電気ケトルに水を入れてスイッチオン。食パンを二枚取り出し、トースターへ。小さいフライパンをコンロの上へ、ハムを並べて点火。マグカップにインスタントコーヒーをざららっと出す。ハムの縁がカリッとしたら卵を割り入れて、水と蓋。手間だけど、やっぱり目玉焼きは蒸し焼きした方が好みなのだ。マグカップにお湯を注いでいるとトースターがチンと焼き上がりを知らせたので、一枚にマーガリンを塗り、もう一枚にポテトサラダを乗せた。青日が作るポテトサラダは大きめの玉ねぎが入っているザクザク食感、これをトーストに乗せて食べるのが睦千のお気に入りだ。焼き上がったハムエッグもトーストに乗せ、今日はとりあえずシンプルに塩胡椒。それを大きな皿に盛り付け、コーヒーを持ってダイニングへ、一人手を合わせてポテサラトーストにかぶりついた。

 朝食は一人だ。青日は朝はギリギリまで寝ていたいタイプだし、朝食も食べないことの方が多い。しかし、最近の青日は少し違う。週のうち何回かは早く起きて蓮華殿に行っているようだ。宇宙人の怪と遭って以来、青日は修行に励んでいる。今まで、休みの日にしか行ってなかったのに、なんの心境の変化だろうか。別に青日が強くなるのはいい、でも、なんとなく落ち着かないなぁ、と睦千はトーストを食べ進める。そうこうしていると、玄関のドアが開く音が聞こえた。

「ただいまー、おはよー」

 Tシャツとジャージ姿の青日がげっそりした顔で帰ってきた。その顔は修行疲れだけではない隈がある。

「……おかえり、おはよ。眠れた?」

 トーストを飲み込んでコーヒーを一口。それから、睦千は青日に尋ねた。昨日は眠れなかったっていう顔。以前は、憂鬱極まり眠れない時には睦千の奇怪病で青色日曜症候群を無効化して、眠らせていた。しかし、最近はそれを青日は断固拒否と言う。絶対拒否、と言われた時、睦千は青日の部屋の前で立ち尽くした。うそぉ、なんで? 尋ねる事もできずに、そのままズルズルと、日曜日と戦う青日をオロオロと見ているばかりである。そうして初めて気付いた、今まで自分は日曜日の青日の憂鬱を取り除いていたと思ったが、それはウィッピンがあったからであって、ただの白川睦千は全くの役立たずである。睦千は最近、自分の存在価値というものに疑問を持ち始めていた。ウィッピンのないボクには何があるのか、モラトリアム的思考、んな悠長にアホな事言ってられねぇよ、青日に負けてられないだろうが、白川睦千は盛堂青日に捨てられそうなピンチなのである。まだ相棒は青日が良いので睦千だって、睦千ですら頑張るのだ、腕捲ってムキッと力こぶ、なんちって。

「昨日? ちょっとは寝たよ」

 青日は睦千の向かいの椅子に座ると、手にしていたものをテーブルの上に置いた。

 憂鬱な日曜日の夜をやっとこさ越えた青日は、月曜日は少し早起きだ。ちょっと早く起きて、近くのジャストフィットに行く。

 ここで八龍のコンビニ事情である。現代社会においてなくてはならないもの、それはコンビニエンスストア、つまりコンビニである。個人商店が軒を連ね、チェーン店が入り込む隙間がない八龍にも一応青い牛乳瓶のマークやら七時十一時やら家族商店みたいなよく見るコンビニはある。しかし新都市地区と電電地区にしかない。

 じゃあ大体の住民が暮らす巨匠館地区にはコンビニがないのか、と言われるとそれは違う。

 まず、老舗『ザッカチン』、元は何でも屋として始まったこの店は、今では大体なんでも揃う皆様のご近所の商店である。おにぎりと唐揚げが人気、洗剤からちょっとした薬まで揃う。営業時間は午前八時から夜六時まで。夜に店が開いていないのは不便の極み、ならば、と進出してきたのが『4747』。こう書いて「よなよな」と読む。だが、なぜか「ヨンナナ」の愛称で定着した。お手頃スイーツだったり小腹を埋めるホットスナックが多い。日用雑貨もなかなか揃っているし、図画工作で使えそうな牛乳パックとトイレットペーパーの芯が有志によって集められているのも人気の秘密である。営業時間は夕方四時から朝七時まで。しかし、まだ隙間がある。ここを埋めたい、深夜と早朝に店を選ぶ楽しみを増やしたい、そうして爆誕したのが『ジャストフィット』、通称ジャスットだ。営業時間は二十一時から九時まで。小腹を埋める小さい弁当から朝ごはんまで、がっつりから軽食まで、ついでにソフトクリームも絶品、こちらは面白雑貨のラインナップが多く、何度ほろ酔いの頭でうっかり入って、うっかり雑貨を買った事やら、睦千はこの間うっかり鶏のおもちゃを買った事を思い出した、こけこっこー。

 以上が八龍のコンビニである。現在午前七時前、近くのジャストフィットと言えども、ちょっと歩く。下に降りて向かいの地下、そこで月曜日発売のコミック誌を買うのが青日のルーティーンだ。

 八龍にも全国の少年をときめかせる週刊少年誌が一日遅れくらいで入荷される、まあ離島なもので。とは言え、ここは八龍、己の夢と野望を叶えるためには手段を選ばない奴らしかいない島だ。当然、漫画で食っていきたい奴もゴロゴロいる。そんな奴らが集まってできたのが『週刊八龍ポップ』だ。最初は好きなやつが寄稿して、それをコピーして束ねたやつが喫茶店や停留所に置かれていた。それが爆発的に人気になり、ついに八龍出版社に拾われ八龍の月曜朝の定番、文化の一部となっていた。最初は暇つぶしに読んでいた青日も今ではいそいそとコンビニに向かうくらいにはハマっている。じっくり読みたい派の青日は、ちゃんと買って家で読む、因みに睦千は立ち読みで済ませるタイプだ。

 青日が毎週欠かさずに読んでいる作品は『キドーヒーロー・I-la9(アイラック)』と言う。鹿熊猪兎しかくまいのとによるロボットバトルコミックで、既刊三巻の王道のアツイ展開と本当に週刊連載かと疑いたくなるほどの緻密な絵が人気である。どのくらい人気かと言えば、月曜の朝の八龍電子掲示板のトレンドに必ず載っているほど、という塩梅。睦千も青日に勧められて読んでいる、先週は主人公ユキジ・エモトを導く上官ルイ・カツマタ隊長が幼馴染の仇との戦闘の終盤、ここ数ヶ月、このカツマタの掘り下げが続いている。カツマタが天才と称えられ、挫折し、それでもなお天才として前線に立つ過程である。そして、先週、彼は切り札の必殺攻撃を繰り出した。仇が木っ端微塵に吹き飛んだのを確認し、カツマタはようやく過去を乗り越え、ユキジの師となる事を決めたのだ。いや、これはもう今週は師としてユキジに会いに行くのだろうと、睦千も読者も確信している。とりあえず青日が読み終わったら借りよう、てか押し付けてくるから読んでから仕事行こうと食事を続けようとすると、え、と呟いた青日の手から八龍ポップが落ちたのを見て、睦千は、んが、と目玉焼きの黄身を口に押し込もうとしていた手を止めた。

「どうしたの」

「…………」

 青日はゆっくりと手を動かし、また八龍ポップを捲る。ページを戻し、また最初から。睦千はとりあえず放っておくことにして、今度こそトーストを頬張った、至福。もごもごと咀嚼を繰り返し、最後のひとかけを飲み込んで、コーヒーで一息ついていると、あー! と青日が声を上げてテーブルに伏した。

「……どうしたの?」

 ちょっと驚きながら尋ねると、青日はぐすりと鼻を啜りながら顔を上げた。あれ、ちょっと泣いているのか?

「カツマタ隊長が死んだ……」

「……ん?」

「カツマタ隊長が、死んだの……」

「……カツマタ隊長って、キドーヒーローのカツマタ隊長?」

「うん」

「……え、死んだの?」

「……」

 ちょっと借りる、と青日からポップを奪い取り、ページをめくる。カツマタの必殺攻撃は仇には全く効いていなかった。吹き飛んだと思った機体はそういうで、それどころかカウンター攻撃をくらって、カツマタは身体半分を吹き飛ばされ、そのまま機体は爆発した。あれ、これは、あれ?

「カツマタって人気キャラじゃないっけ?」

「人気だよ、めちゃくちゃ人気。いつもカツマタ隊長の台詞が話題になってんじゃん」

「結構早々に退場した、ね?」

「これは試されてんだよ」

「試される?」

「ここでお前の好きな人はいなくなったけれども、それでもお前はついていくのか!? って!」

「大袈裟」

 睦千は急展開だけれども、そうくるかぁ、としみじみ噛み締めている。味方陣営で初めての脱落者が天才の師、カンフー映画とかでよくあるタイプ。短い時間で得たものでユキジは成長していくのだろう、なるほど。しかし、カツマタ隊長に入れ込んでいた青日はそれどころじゃない。

「大袈裟にもなるよ! だって、カツマタ隊長だよ!?」

「そういう師匠ポジションって途中で脱落するものじゃない」

「早すぎだって! うちの蓮華殿の師父見てみなよ! めっちゃ元気じゃん! 今朝も元気に弟子の攻撃いなしながら新聞読んでいたんだよ!? 師匠は元気でなんぼじゃん! それにユキジはまだ何も成長してなくない!?」

「戦っているならそれは成長じゃないの?」

「もう一声ほしい! まだまだカツマタ隊長にいろんな事を教わって、強くなったユキジを見届けて欲しかった!」

 うわーん、と青日は伏せる。睦千は自分のスマホを開くと、八龍掲示板を開く。トピックスには「カツマタ隊長」「どうして」「隊長うそ」「クソ漫画」「鹿熊先生」「隊長なんで」のお葬式状態だ。

「まあ、鹿熊先生にとってはこのタイミング、だったのかもしれない」

「ムリ」

 青日の語彙力まで死んだわ、と睦千はそのままスマホでニュースを見る、まだ今日も暑いらしい、じゃあ白のノースリーブのセットアップかな、赤いヒール合わせよ。

「てかさぁ、今日巡回当番」

 ニュースを見ながら睦千は青日に告げる。

「ムリ」

「ムリじゃない」

「ムリだってぇ」

「青日ぃ、もう立派な大人でしょー?」

「ムリだって、おれ、かっこいいカツマタ隊長を見れるんだって、すんごくルンルンだったのに、裏切られた」

「読者の予想を裏切るのが名作じゃない?」

「凡庸な展開だって、そこに広がる言葉や絵に新しい発見だったり、その一言そのコマに命が注いであったり、それが伝わるから名作なんだよ。びっくり展開が名作だなんて、全くもってナンセンスだよ」

「……それをひっくるめて、予想を裏切るってやつじゃない?」

「うまいことまとめないでよー、もー、腹立つー!」

 青日はジタバタと手を振り回した。子供っぽいその仕草に、睦千は多分仕事にはちゃんと行くんだろうなぁ、とコーヒーを飲み切った。




 まあ、なんでもないと思っていた朝で始まる日ほど、劇的な何かと巡り合うものだよね、と睦千はそれなりこなしてきた日々から思う。

「……最悪」

 青日が口元を覆いながら零した。

「本当に……これ、怪と人間、どっちだろう」

「さあね。おれ、とりあえず電話するよ、警察と春田さん」

「お願い」

「現場、荒らさないでよ」

「分かっているって。今日のボクの服見なよ、上下真っ白」

 だいたいいつもそうじゃん、と言いながら青日が睦千の隣に立ったまま電話を掛け始める。睦千はそれを聞きながら、服を汚さないように気をつけながら目の前の部屋を観察する。

「はい、巡回中にドアの下から血が流れているのを見て部屋の中に……はい、六花地区の爪切り屋」

 せせら笑うように部屋中に置かれた爪切りがカチカチと音を立てる。普段はそんなふうに聞こえない音が耳につく。数百はある爪切り全てが血に濡れているせいだろうか。チカチカと点滅をしている蛍光灯まで飛び立った血、床も壁も血、生き物の死に絶えた悪臭、ほんの少し甘酸っぱい香りもしている。睦千の足元に空のケチャップの容器が五つあるからそれだろうか、赤のヒールにベッタリとケチャップ混じりの血が付いているのを見て、睦千は溜息を吐き出して、すえた空気を浅く吸った。つまり、ここの一部はケチャップでできている。そして、部屋の中央に死体。数えて、恐らく五人。恐らく、と言うのは中央に積み上げられるようにあるためである。死体は全て腕が切断され、切り取られた腕は見当たらないが、どうやらミンチにされてゴミ箱に押し込まれているらしい。死体の前に置かれたゴミ箱と爪のかけらのようなものを見下ろして、睦千は顔を顰めた。

「すぐ警察と呪方来るって」

 ため息混じりに携帯をしまいながら青日が言う。

「……模倣犯かなぁ」

「……こんな事件あったっけ?」

「マンガ。『ポップ』で連載していたやつ。タイトル忘れたし、おれ読んでたわけじゃないけど、ペラペラめくった時に見えて、うわぁグロって思ったから。殺して腕を切り落としてミンチにしてケチャップでの。それが好物の殺人鬼の話」

 ケチャップもあるし、と青日は容器を見下ろしながら言う。

「それって面白いの……? まあ、模倣犯だとしたらボクらの出番じゃないのかなぁ」

「だとしても話は聞かれるし、しばらく警戒はしておかないとアレでしょ」

 まあね、と睦千は答え、二人で部屋の外に出る。それから、また何の気なしに携帯を見て眉間に皺を寄せた。

「いや、もしかしたら福薬會案件かも」

「え、なんで?」

 ん、と青日に携帯を差し出す。画面には武闘派のグループチャット、発言者は大狸師匠だ。

「八龍内で死者多数……全て怪の気配が有り……え、やば」

「同一怪かはまだ確認中だけど、ここまで大きい被害がほぼ同時に起こるって事はなかった」

「じゃあ、これも?」

「かもしれない」

 睦千は携帯の画面を閉じると、再び部屋の中を見渡していると、外から悲鳴が聴こえる。二人は弾かれるように声の方へ駆け出す。

 薄暗い六花の通りに、黒い影が二つ。そのうちの一つは若い女性の首を鷲掴んでいる。もう一つは手持ち無沙汰のような、戸惑っているような、睦千はそれを危険度が低いと判断する。

「ボクがあの人を保護するから、青日は影の方どうにかして」

「よっしゃ」

 青日はスニーカーの紐を絞め、そのままクラウチングスタート。影が女性を盾に突き出す。ラッキー、と睦千はウィッピンを横薙ぎに振るった。白い鞭は地面を這うようにしなり、睦千が振り上げると同時に波のようにうねり、その先が影の腕を下から斬り裂いた。影が怯んだ一瞬、青日は女性との間に入って、後ろ手で女性を突き飛ばす。睦千は再び鞭を振るって、女性の腰にウィッピンを巻きつけ、一気に引き寄せる。

「手荒でごめん、逃げて」

 引き摺られるように睦千の腕に飛び込んできた女性を受け止め、ウィッピンを解き逃す。転げるように走る女性の背を見て、再び影に向き合う。青日は影と拳と足を打ちつけ合う。先ほど斬り割いた腕はもう戻っているようだ。

「青日!」

「おれ一人でなんとかなりそう!」

 ん、と睦千の心がギュッと縮こまる。そんなの、思っている暇じゃねえってんだ、ともう一つの影の方の対応。

 青日が相手しているのを影Aだとして、こっちは影Bと定義されるわけで。影Bは睦千に背を向けてやはり呆然としているようだ。わずかに俯いて掌をじっと見ている。睦千はウィッピンを片手にズカズカと近寄り、影Bの肩に手を掛け、そのままこちらを向けと引き寄せた。

「……は?」

 まず、顔が見えたことに驚いた。顔だけ見えていた。右目を覆うような広範囲の傷痕、その上に機械のようなモノクル、生気がない鋭い眼に、無精髭、それにロボットアニメで見るような身体の線に沿ったパイロットスーツみたいな服装、絵でしか見た事がないが、多分現実にいれば、もっと言えば、クオリティーの高いコスプレにしか見えない。なんで、と思ったまま、睦千は呆けて呟いた。

「……ルイ・カツマタ……!」

 ハッと影の中の顔が睦千の顔を捉える。自我と意識が影の中に入った、睦千はウィッピンを振るおうと右腕に力を込める。

「……なんで、俺を知っている?」

 話せる怪か、と顔に皺を寄せる。厄介だ、人を惑わす怪はタチが悪い。そうしている間に、影は人の形と色彩を得る。漫画から出てきたような服装の人間に、ふと、本当に怪だろうかと、睦千はウィッピンを握る手から力を抜く。

「うわっ」

 投げ飛ばされた青日が睦千の横に転がってくる。

「青日!」

 睦千が青日の怪我を治そうとウィッピンを構えるが、青日がそれを制する。

「受け身はとったから平気!」

 青日はそう言いながらぴょんと起き上がり、汗をTシャツで拭いながら睦千の方を見た、最近心配性になった相棒の様子が気になったもので。

「あいつ、カンフーマスターかな!? リャンリャン兄より強い……カツマタ隊長?」

 青日がギョッと目を見開き、睦千とカツマタを見比べた。

「もう一方の影から出てきた」

「なんで?」

「知らない、コスプレ?」

 戸惑っていた様子のカツマタは二人と影を見比べ、それから己の手を見た。

「なあ」

「うわ、喋った」

「喋るよ」

「早く言ってよ!」

 話しかけられた青日は存外驚く、多分、少し地面から浮いた。

「驚いている場合か。君たちはあれに襲われているんだろう」

「厳密に言えば違うけど」

 睦千がムッとして言い返す、襲われているってボクが弱いみたいな言い方すんなって。

「だいたい合っているよ、どうにもできないのは確かじゃん」

 影の方はこちらを伺い、というより挑発するような手招きもしている、さきほど投げ飛ばされた青日はうっわムカつくと瞬間湯沸かし器的に怒りを爆発させた。

「ムカついたから殴ります!」

 宣言と共に青日が飛び出す。あいつの情緒不安定すぎ、と睦千はウィッピンで援護する。

「助太刀する」

 そして、カツマタも飛び出した。あれ、怪じゃないの? と睦千は咄嗟にウィッピンをカツマタの背に振り翳した。しかし、弾き飛ばされたカツマタはその場でタタラを踏むだけで睦千に一瞥もせずに影へと向かった。

「……消えないってことは、強力な怪か奇怪病か」

 ウィッピンで無効化できない怪、奇怪病、睦千は厄介だなぁと内心呟く。それほどまでに強力な欲望が八龍で暴れているのなら、被害はどれほどだろうか、というか、どう対処するべきか。睦千の視線の先、カツマタは青日と二人で影を囲んでいる。そして、先に青日が仕掛ける、影へと殴りかかり、影がそれをかわすと同時にカツマタが足を払う。それから三人で揉み合うように殴り蹴り合う。そして再び睨み合う形になる。その三人の静寂を切り裂くように、睦千はウィッピンを素早く影へと放つ。睦千のイメージ通り、物理法則を無視した白い一線は影の首を的確に貫く。そこから泥人形のように形が崩れ、影は嘲笑い、風景に溶けるように消えた。

「……あれはなんだ?」

 カツマタがポツリと呟く。

「怪」

 睦千が端的に述べると、カツマタは眉間に皺を寄せた。

「グーアイ?」

「……あなた、名前は?」

「ルイ・カツマタ、所属は第一スペース防衛軍キドーパイロット隊だ」

「……ここに現れる前、何していた?」

「……現れる前……」

「ここで目覚める前」

 睦千の問いかけに、カツマタは額に手を添え、そうだ、と呟いた。

「俺は、敗北した。死んだのだ」



 影が消えてもピンピンとしているカツマタを引き連れ福薬會本部に向かう。その道中、睦千と青日はかいつまんで八龍の事を説明し、ザッカチンの店先に並んでいた今朝発売の八龍ポップを見せる。カツマタが最新話を見ている間、睦千と青日はグループチャットの確認をする。複数の殺人事件、傷害事件、そして複数の怪・奇怪病らしき影の目撃証言が出ている。報告をどうしようか考え、見せて直接話した方が早いかと、睦千は携帯を仕舞う。それと同時にカツマタは八龍ホップを置いた。

「……なるほど、君たちの言う事は本当らしい」

 SFじみた服装のまま、カツマタはウムと唸る。心底、ここが八龍で良かった、公序良俗に反しない服装であれば、大体みんなが素通りする。カツマタもおそらくハイクオリティなコスプレとしか思われていない、むしろ真っ白な睦千と真っ青な青日の方が目立っているだろう。

「確かに、このコミックは俺の人生の話だ。確かに俺は、無様に死んだ」

「……本当に?」

 信じたくないと青日が問い掛ける。

「少なくとも、機体が大きく損傷してからの記憶はない」

「でも、それは物語の上での話だから、もしかしたら来週は生きていたよってなっているかも」

「だとしたら、君たちは俺が見ている夢になるのか?」

「……夢は、ある程度前提が必要。夢は、記憶の整理で無意識の思考、あなたはボクたちやこの街を作り出せるほどの前提知識を持っているの?」

 脳内で漫画の背景と設定を思い出す。近未来的建物が並んでいるが、人々は少なく、皆一様に暗い顔をしていた、八龍とは何もかも反対の場所だ。

「あなたが住んでいたスペースはこんなに穏やかで、こんな建物と、こんな服の人間がわんさか歩いているような場所だった?」

 睦千はカツマタに問い掛けるように、その向こうの青日に問いかけていた。青日は不貞腐れたように眉を寄せたが、カツマタはそうだな、と睦千を見た。

「きっと、俺の方が異常なのだろう。俺は、確かに紙の上だけの存在だ」

「聞きたいんだけど、あなたがこうしてボクたちと話すまでの事、何か分かることは?」

 睦千は週刊誌の隣、箱の中に乱雑に投げ込まれている飴を物色しながら問う。

「何も分からない。ただ、夢を見ているように朧げな景色だった。景色などは意識していなかった。映像記録を見ているだけの感覚に近い……映像記録は、こっちにもあるのかい?」

「問題なく存在している、気にしないで進めて」

 カツマタは、ああ、と続ける。

「記録を見ている時と同じで、俺の方からは手を出せないと思っていた。事件が起こっていると理解しているが、何かしようという発想がない。だが、君が……今更だが、名を聞いても?」

「ああ、言ってなかった。ボクは白川睦千……ムチ・シラカワの方が問題なく伝わるかな」

「そうだね、ここは、カツマタ隊長のとこのA地区と文化は近いかな。おれはアオヒ・セイドウ、アオヒとムチでいいよ、よろしくね」

 青日は手を差し出すと、カツマタはよろしくとその手を握った。

「アオヒ殿は、俺の世界、と言うのかな、このコミックについて詳しいのかい?」

「一番ではないけど、詳しいと思うよ」

 睦千とカツマタとの会話を不満げに聞いていた青日はようやく笑顔を見せる。

「なら、おかしいところを指摘してほしい。君たちの邪魔はしたくないから……話が逸れたね、ムチ殿が声をかけるまで、ルイ・カツマタとしての意識はなかった」

「……やっぱり、あの影とは別物?」

 物色していた飴の箱から手を離し、睦千は口元で緩く指を絡ませる。

「別物は別物だろうけど、なんか疑うような事あるの?」

「最初カツマタ隊長は影の状態だった。ボクが触れたからなのか、声をかける前からなのか、顔が見えていた。最初からルイ・カツマタとして存在していたものなのか、ボクが触れて、ボクの記憶か意識か無意識が影Bに作用して『ルイ・カツマタ』の顔を作り出した、もしくはボクの奇怪病が作用して、怪・奇怪病の効果が一部分抑えられている、とか、別物の可能性と影が何かしらの影響をうけて変質した可能性、ふたつある。果てしなく別物だろうけど、別物と断定できるほどの根拠はない。状況証拠しか無い。だから、青日には悪いけど、ボクは『この人』を疑い続けるよ」

 青日は睦千の言葉を噛み砕くように数秒地面を見下ろし、それから顔を上げて睦千の目を見た。

「うん、睦千はそうする、それだけの話だよね。どう考えていたって、おれたちは影の事を調べなくちゃいけない」

「……まあね……嫌じゃないの、青日は」

「別に。今更じゃない? おれと睦千、合わないところは徹底的に合わないじゃん。おれ、辛いのダメだけど、睦千は割と好きだし」

「まあ、そうね」

「じゃあ、行こう。情報集めに行って、師匠たちにも話さなくちゃ」

 そうして福薬會本部に着き、大狸師匠にまず状況を説明すると、師匠たちと成維と茎乃が早急に集められた。

「お前らもそれなりにトラブルメーカーだよなあ、普通、組織のトップがヒラの部下の顔と名前とやらかしを覚えているわけないんだよなあ」

 成維は眉間の皺を寄せ、不機嫌を隠す事なくベラベラと喋る。睦千と青日は顔を寄せ合い、パワハラじゃね? と呟いた。

「成維、面倒なのは分かるけど、重要な手掛かりでしょう。シャキッとしなさいな、御大」

 茎乃がその草臥れた頭を叩く。それらを無視してカツマタを観察していた狐師匠はそうだな、と声を上げる。

「奇怪病ではない、影と同じ邪気がある。でも、怪でもない」

「そんなことあるの?」

 青日が尋ねると、知らね、と狐師匠は椅子に座っているカツマタの周りをぐるぐると回りながら観察を始める。

「ねー、煙師匠、保安方の案件で何か関連してそうなのないのー?」

 キメラ師匠が口を挟むように、部屋の隅の灰皿で燻っている煙に尋ねる。

「ないね。最近の保安方は暇をしていたんだ。影を操る奇怪病者も、怪しい奇怪病者もいない。狐師匠に訊きたいんだけど、最近の見回りで怪が出現しそうな邪気のポイントはどうなんだい?」

「現在確認中でーす。でも、まあ関係ないかな。影が出た場所も事件が起こった場所も注意ポイントには入ってなかったと思う。あたしは把握してなかったかな……ねえ、じゃあなんであそこに無能組はいたの? サボり?」

「怪追いかけて行ったんですよ、六花。怪捕まえて、じゃあ上に戻ろうと思って」

「上に戻るのに、そのまま表通りを進むより、建物の中を突っ切って行った方が早いから、爪切り屋が入っている地下ビルに入って、変な匂いがしたから見に行ったら、そういうこと」

「あんたたちって仕事するんだ……」

「キメラ師匠、それひどいですよ!」

 青日が反論するとごめんごめんとキメラ師匠は笑う。

「それで、そのカツマタ隊長に関しての見解だよ。狐ちゃん的には?」

「今、祓うのは怖いかな。影の怪は複数いて、簡単には消えない事が報告されているわけでしょう。札にも入らない、呪方でも祓えない。攻撃すれば消えるけど、でも本体は浄化できていない。特定の方法による浄化、条件による浄化、だとすればカツマタをどうするかは、怪の美学、正体を突き止めてからでもいいと思う。今のカツマタはあたしたちにとってのヒントよ。それにこれが本体だとは思えない。人を殺す怪なのに、邪気がここまでないのはおかしいわ。人を殺した怪は、怨念みたいな邪気が纏わりついているもの」

「……それって、人もそうなの?」

「さあね。あたしが感じ取れるのは怪限定、人は専門外。怪は欲望、幽霊は魂の話ってことなのかしら?」

 睦千はそう、と呟く。

「ごめん、話を逸らした……それで、狐師匠はカツマタ隊長は経過観察って感じなんだ」

「そう。もし、カツマタが本体だとしたら、尚更今のままだと浄化しきれないと思う。呪方に浄化すべき邪気が見えていないのだもの。うん、それも踏まえると、やっぱり今は手を出すべきじゃないわ。御大、それでいい?」

「いいぜ。師匠方がそう判断するんだったらな」

 成維がそう答え、睦千と青日を観ながら言った。

「それの世話はお前らがしろよ」

「……カツマタ隊長のこと?」

「あいにく、俺は何が流行っているだとかには興味はないからな」

「御大の性格の悪いところ出てる」

「お前たちが見つけて、お前たちが連れてきたんだ、当然の話だ。の正体でも些細な情報でもなんでもいいから見つけて来い」

 成維は不満そうな青日を見て続ける。

「今日だけで何人死んだと思う。分からないんだよ、切り刻まれた住民も燃やされた住民もいる。把握できただけで十人、もっといるだろうし、もっと増える。その原因がこの得体の知れない男かもしれない。当然、分かっているよな」

「分かっているよ、大変な状態なのも。でも、それとカツマタ隊長を疑うのは別じゃん、おれは疑いたくないの!」

「じゃあキビキビ動け、証拠を見つけて、解決して、それが関係ないと証明しろ」

 青日は黙って頷く。なんとなく、成維らしくない言い方だなと頭の中に浮かんだが、すぐに追い出した。




 三人がまず向かったのは深文化郷地区にある週刊八龍ポップ編集部である。『キドーヒーロー・I-la9』の作者、鹿熊猪兎に会うために編集部に連絡するとちょうどいると言うことだったので移動した次第。カツマタには事務室に置かれたままのスタジャンとキャップを拝借してとりあえず服装だけでも現代に馴染ませる。しかし、街は住民が姿を消し、怖い顔付きの調査員が歩いている。物々しい雰囲気で、ピリピリとした空気が青日の首の後ろを刺しているような気がしていた。青日は首の後ろを押さえながら、編集部が入っているビルの中に入る。

 ビルの中は想像していたよりも騒がしい。青日は睦千と顔を見合わせ、エレベータで三階の編集部に向かう。

「おい! それは『この看板は見ていた!』の153話のスプレーガールの手口だ!」

「この事件って俺の描いたやつのオマージュじゃないっすか!」

「どうしよう、小町先生の模倣犯とか出たら、それって漫画のせいにされちゃいますか?」

 静まり返った街とは何なのか、日々の喧騒がこの一部屋に濃縮されたかのような騒ぎだ。ギョッとした睦千と青日は顔を見合わせ、とりあえず目の前を駆けて行く編集者を呼び止め、鹿熊猪兎がいるか尋ねる。

「何すか! 今それどころじゃないんすよ!」

「福薬會だってば。さっき電話した!」

 青日が声を張り上げると、ハイハイと対応していた編集者の後ろからヒョロヒョロの男が出てくる。

「ここは僕がやるから、君は早く資料持っていって!」

 編集者を追い出した男はヨレヨレのシャツから名刺を取り出し、三人に差し出す。

「鹿熊先生担当の猿渡さわたりです、とりあえずこちらにどうぞ、今、ちょっとバタバタしてて、あれなんですけど」

「そうね、想像より騒がしい」

 ゆったりと脚を組んだ睦千は猿渡の顔を見て微笑んだ。

「なんかあった、そうでしょ?」

「隠すつもりは編集部にはないですよ。あくまでまだ確認段階です」

「こっちでも確認するから教えてもらっても?」

「今、八龍で起きている事件が八龍ポップで掲載された漫画と同一の可能性があります」

「へぇ」

「だから慌てていたんだ」

 二人で関心していると、猿渡がそれで、と話を進める。

「なぜあなたたちは鹿熊先生に会いに来たんですか? 『キドーヒーロー・I-la9』は連載期間も短く、ロボットアクション物です。私共はロボットが暴れた、なんて話は聞いておりませんが?」

 猿渡は穏やかな顔のまま、三人を疑いの目で見る。

「まずはこれを見て欲しい」

 睦千がそう言ってカツマタをチラと見ると、カツマタは心得たようにキャップを取った。現れた顔をしげしげと観察した猿渡は、なるほど、と言った。

「ルイ・カツマタにそっくりですね」

「本人ですから」

 青日がそっと訂正すると、それで、と猿渡は微笑んだ。

「完成度が高いこのコスプレイヤーさんがどうかしたんですか?」

「本人だって言っているじゃん」

 睦千が意地悪い笑みを浮かべた。

「彼はルイ・カツマタ本人。キドー兵器に乗って、最高のパイロットと言われて、ユキジ・エモトの師匠筋で、今週号で爆発四散して今朝のネットをお騒がせしたルイ・カツマタ」

「睦千、それはおれの傷も抉ってるよ」

「まあそれは置いておいて」

「置かないでよぉ、おれまた泣きそう」

「泣いてたっけ?」

「泣いてたよ!」

「本当に言っているんですか?」

 いつも通り緊張感に欠ける会話を始めた睦千と青日を遮るように、睨みつけるような目で猿渡がカツマタを見る。

「本当に言っている。福薬會の師匠方にも見てもらった。限りなく怪だけど、邪気がなくて浄化できない存在。そして、彼自身も自身が死んだ記憶を持ってここにいるし、今週号の内容を見て、自分がコミックの存在だと認識している」

「ああ、ムチ殿の言う通りだ」

 カツマタが口を開くと、猿渡は目を見開いた。

「驚いた……カツマタ隊長の声なんて聞いた事ないけど、本当にカツマタ隊長だと分かる声だ」

「イメージ通りってこと?」

 青日が尋ねると呆然とした顔のままで猿渡は頷いた。

「なら信じるよね?」

 組んだ脚の上で頬杖をつく睦千が心底楽しそうに尋ねた。

「失礼します、お茶をお待ちしました」

 ノックと共に女性が一人入ってくる、犬の顔が堂々とプリントされたTシャツとジーンズ姿の女である。猿渡はその顔を見て、は? と一言言った。

「鹿熊先生、なんで入って来たんですか?」

「だってアタシに会いに来たんでしょ、そこの人たち」

 こんにちは、と女性は名乗る。

「キドーヒーロー・I-lu9作者、鹿熊猪兎です」

「福薬會調査方、白川睦千」

「同じく盛堂青日です、連載、いつも読んでます」

「おや、ありがとう。今日の展開ひどいよねぇ」

 青日は作者がそれを言うなよ、という言葉をグッと飲み込んだ、それくらいの社交性はあるのだな、二十歳越えているし。

「それで、そこのコスプレの人は誰? 福薬會の人? それとも当てつけ?」

「……俺は」

 カツマタが少し迷いながら口を開く。

「ルイ・カツマタだ。あなたのコミックから出て来た……」

 弱々しい語尾で語る姿を観察した鹿熊は徐にジーンズのポケットに手を入れ、ペンを取り出し、数度くるりぐるりと回したかと思うと、手の中に握り締めカツマタの顔面に向かって突き出した。手元を注視していた睦千は僅かに目を見開き手をカツマタの前に出し、青日は咄嗟にカツマタの肩を掴み自身の背中に隠すように引き倒す。鹿熊の突き出した手は、睦千に手首を掴まれ動きを止めた。

「睦千!」

「大丈夫」

「止めないでよ、そんな偽物、殺さなくちゃ」

 鹿熊の手がほんの数センチカツマタの方へ向かい、睦千の手の甲の静脈と手首の腱が浮かび上がる。

「それは見逃せない。これはボク達にとっての手がかりだ」

「アタシが殺したやつがここにいるのなんて許せないに決まっているじゃん」

「俺は、あなたに殺されてはいない」

 的外れのような言葉をカツマタは発する。だが、その言葉は力強く響いていた。

「俺は未来を夢想したから負けたのだ。目の前に仇がいるにも関わらず、隙を見せた、そのせいだ」

よ」

 睦千を睨みつけながら鹿熊は鋭く言い放つ。

「アタシの頭の中で産まれて死んだあんたの頭の中なんて、アタシが一番分かっている。アタシが作者、アタシがあんたの世界の神、全知全能万能の神、あんたを殺したのはアタシ。なのにアンタはここにいる、反逆よ、神に逆らっているのよ、あんたは」

 猿渡が先生、と呼び止める。

「いなくなってよ、せっかく殺したのに、なんであんたはそこにいるのよ!」

 叫んだ鹿熊は睦千の手を振り解こうと暴れ始める。睦千と猿渡は鹿熊を抑えようと手や腕を掴む。

「青日! カツマタ連れて一旦本部に戻って! ボクもすぐに戻るから!」

「分かった!」

 鹿熊の剣幕を見た青日は僅かに動揺するカツマタの背中を押すように部屋を出たのだ。

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