思い出した出会い(前)

イズミ「では、どうぞ」

イリゼらの目の前には見た事ない大きな黒い塊が二個横に並んでた。

イリゼ「こ、これは……」


エルデ「あれはクルマっていう乗り物なんだ。結構早い奴でな」


イリゼ「そ、そうなんだ……」


セリニ「エルデさん。知っているんですか」


エルデ「上の地球を旅してて、ちょちょいとな」


イリゼ「へぇ……」

イリゼらは関心そうに車じっと見つめていると

イズミ「どうかしましたか?もしかして、車酔いでもしますか?」


イリゼ「え、あ…」


エルデ「あいやいや、大丈夫ですよー」


イズミ「そうですか。では、どうぞ」

とイズミらが車という乗り物のドアを開けてくれた。

ブレイズ「そういや、エルデはこういうのは乗ったこととかあんのか?」


エルデ「んや?見た事はあるが乗ったのは今回で初めてだ」


イリゼ「え、え?ブレイズ?エルデ?」


ブレイズ「へー、それさ、後で話聞いてもいいか?」


エルデ「もっちろんよ。後でたっぷり酒飲んで語ったるわ〜」


イリゼ「え、あ、ちょ……ちょっと!?」

とイリゼの言う間もなく二人は後ろの車に乗り込んだのだった。残るは前の車。そして、乗らずに残っている人はイリゼとセリニだ。その空気を察してしまったのか、イズミは心配そうに

イズミ「前の席に座っときますか?」

と言ってくれた。だが、それはそれで、なんだかんだで気まずいと感じたイリゼは

イリゼ「あ、いえ……大丈夫です。後ろの席で大丈夫です」

と後ろめたくなる背中のまま後ろの席に座った。セリニもその拍子にイリゼの後に続き乗り二台の車は酒場をあとに走った。








イリゼ「……」


セリニ「……」


イリゼ(き、気まずい………)

まるで重い空気が入り混じっているかのようにイリゼはどうこの空気を切り離そうかと迷っていた。イリゼはセリニとは何度も隣になっているが今回は馬車ではなく車。そして頼り船のブレイズもエルデが前の車にいて、ここにはいない。

イリゼ(ここはまず…「あ、そういえばいい天気ですねー」という何気もない世間話か?いや、それとも「ねぇ、現地球って、どんな感じなんだろう?」とかなんかキャッキャウフフが出来るものか……?いやいや……もしくは)

すると

セリニ「…ごめん」


イリゼ「………え?」

なんとセリニが謝ってきたのだ。それに思わず

イリゼ「え、あ、あへ、ど、どどどどどどしたの!?」

とイリゼが某有名なネズミ並の裏声であたふたと手を大きく上下左右に動かしてると

セリニ「僕……イリゼさんのこと……誤解してました」


イリゼ「………ふぇ?」

呆気が出た。いや、驚いた。まさか、セリニからイリゼに対する誤解発言が来たのは。するとタイヤと道中の石らとの衝突のせいか、セリニは震えてた。いや違う。これは本当の震えだとイリゼは気づいた。目にセリニが腕を抑えてるのを見ていたら。

イリゼ「あ、あの……」


セリニ「!」

「ご、ごめんなさい…!つい…を思い出してしまって…」


イリゼ「!」

(セリニさんのあの事…)

イリゼはその事には今でも鮮明に覚えていた。セリニのあの事…そう、セリニがパーティーに追放された事……イリゼ達が初めてセリニに出会った日だ。イリゼはセリニが向けた視線を逸らして「実は…」と口が先出した。







ギルド記者「号外!号外ーー!」

遡ること去年。その日は依頼の魔物を討伐し、その報酬を受け取ろうとしたイリゼ達。が、ギルドの周りをギルド記者数人が二、三十枚の号外の紙を配りまくってた。だんだんと紙を受け取った各パーティーから困惑と驚愕の声が増えてく中で

ギルド記者「あ、エルデ!大変だー!」


エルデ「なんだい、こんな何もねぇ日によ〜…」

エルデの知り合い記者が目の色を変えて駆け寄り、イリゼ達にその号外の紙を一枚渡した。その内容は

《勇者パーティー《銀金帝》 仲間の錬金術師を追放》

イリゼ「………え」


エルデ「ひゅ〜こりゃ、驚いたな」


ブレイズ「な、なんで……」

これには当時、それなり稼いでる小パーティーだったイリゼ達にも驚愕という大きな影響を与えた。

《銀金帝》。国王から任命された国王公認の最強パーティーで勇者ヒーロー アウマを中心とした魔術師キャスター錬金術師アルケミスト治療師ヒーラー騎士ナイト狩人アーチャー の六人で編成されてる勇者パーティーだ。勇者パーティー結成の理由はもちろん、魔王の討伐。その勇者パーティーが結成されて一年も経たずにその錬金術師が国に名を馳せる勇者パーティーから追放されるのだ。これにはさすがのイリゼ達、各パーティーも驚くにきまる。

イリゼ「えっと……これ、国王様は許可出たんですか」


ギルド記者「分からん……。この情報しか流れてこんかった…」


エルデ「理由が役に立てないって……あの錬金術師ちゃんはヤバいって錬金術学会のエラい奴が言ってんのに?」


ギルド記者「俺に聞くなよバカ。分からんもんは分からんよ」

まさにエルデもギルド記者も正しい言い訳だ。《銀金帝》の錬金術師。名前は明かされてはいないものの、何の変哲もないの素材だけで最強のポーション ハイポーションを作れるというそこら辺の錬金術師達を腰を抜かすほどの化け物だ。これには流石の錬金術学会でも「ヤバい、コワイ、イヤだ」と目尻に水滴、半分カタコトで言われる程でもあるのだ。しかしその化け物が追放、もとい勇者パーティーの一人が追放となれば国や錬金術学会にもその勇者パーティーの能力次第にも影響が出るはずだ。

ギルド記者「とまぁ…気になるなら続報をお待ちな」


エルデ「えー、もうちょい詳細とかないの〜」


ギルド記者「お前さっきの話聞いてないんか?」

すると

ギルド事務員「誰かー!」

先程までビラ配りで外に出てた女性の事務員がギルド内で声を上げた。上げた途端に事務員の膝が崩れ落ちて、さらに何か追い詰めたかのように大声を張り上げた

ギルド事務員「勇者パーティーの錬金術師さんがボロボロなって帰ってきた!」

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