第10話

お母様の宝石が全部駄目になって数日が経ちました。


お母様はショックで数日寝込んでしまっています。

あれからすぐに行商を呼んで新しい宝石を購入したようです。

もちろんその夜に全部魔法で駄目にしましたけどね。

最近はお母様の絶叫が、いい目覚ましとなっています。




「ルビー様はやっぱりお美しい」


「それに比べて姉の方は……」


今日は妹ルビーの付き添いで街の教会に繰り出しています。

ルビーはたまに、その『傷を治す魔法』を使い領民の傷を治しに来ています。

領民は皆ルビーに治療されたくて教会に足を運んできています。

最もそのほとんどが擦り傷などの軽傷な人たちばかりなのですが……


「はい。傷は治りましたよ」


「おお、流石ルビー様。ありがとうございます!」


「いえいえ。私は自分の魔法で為すべきことを、貴族の娘として当然のことをしているだけですよ」


「その謙虚な姿勢。ルビー様はまさしく聖女様……」


とルビーが治療後に少し雑談をしている間に、教会には長蛇の列が段々と伸びていきます。

ルビーはそれに気づいている様子ですが、治療が済んだ患者との雑談を止める様子はありません。

このままでは仕方ないので、私が止めに入ります。


「ルビー。次の患者が待ってるのよ」


「『出来損ない』が! 私とルビー様との時間を邪魔するな!」


「ですが他の患者が……」


と患者から私が怒られてしまいます。


「まあまあ落ち着いてください。ごめんなさいね。次の患者が待ってますから、またの機会があったらその時にね」


「はいっ。やっぱり聖女様はお優しい……それに比べて姉の方は……」


ルビーが宥めると私の時とは態度をガラッと変えて、ルビーの言葉を聞いてこの場を去っていきました。

去り際に私に対しての不満をこぼしながら……

ルビーはそれをニコニコしながら見送っていました。



「大変ねぇ。お姉さまだけ毎回毎回怒鳴られて~」


「……こうなるって分かって毎回やってるんでしょ?」


「ええ~? 何のとこか私分からないな~」


と惚けるルビーですが、その目が玩具で遊んでる子供の用に楽しそうです。


そもそもの話、私が妹の治療行為に付き添う必要なんてないのです。

ルビーの治療に私が同行しているのは、彼女がお願いしたから。

断ったら断ったで両親に叱責されるので、私には断る選択肢は毎回ありませんでした。


こうやって、ルビーはいつも私を落として自分の評価を上げているのです。

両親から甘やかされ、領民から尊敬されているルビーは、私が蔑まれているのを見て悦に浸っている子なのです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る