第9話

お母様もいつにも増して饒舌になっている。

よほどお父様の姿が見ていてスカッとしたのかしら。


とは言えお母様の愚痴を聞くのもうんざりしてきたわね。ちょっと嫌がらせをしてみようかしら……


「(宝石に元の輝きを取り戻せるんだから、もしかしたらその逆もいけるんじゃないかしら……)」


とお母様が指に着けている指輪の宝石に魔法をかける。

床に散らばっている宝石と同じくらい劣化するイメージ……


「大体あの男は昔から……へっ?」


お母様は最初理解ができていない様子。

何故なら、さっきまでキラキラと輝いていた宝石すべてが、その輝きを失いただの石ころと化しているのだから。


「い、いやああああああ!!!!!」


お母様は現実を直視できないのか、指輪を外していろいろな角度から見ているけど、どの宝石もその様子が変わることはなく、色あせたまま。


「だ、誰!? 誰のしわざ!?」


とお母様は使用人に当たり散らしているも、使用人も戸惑っている。

とついには怒りの矛先が私に向いてきた。


「貴方ね!?」


「何のことでしょうか?」


私の魔法が原因だけど、当然のように知らないふりをします。


「貴方が魔法で、私の宝石を駄目にしたのでしょう!?」


「私の魔法は『石を浮かせる程度の魔法』ですよ? そんなこと出来るわけないじゃないですか」


「そ、それは……でも貴方が何かしたんでしょ!?」


とお母様は私につかみかかってきました。


「奥様!?」


使用人は慌ててお母様を止める。

お母様は、使用人数人に引きずられるようにして部屋を出ていった。

使用人もお母様に暴れられて、所々擦り傷ができている。

いい気味だわ。


「離しなさい!? あれがきっと何か――」


段々と遠ざかっていくお母様の声を聞いていると、胸がスーッとしてきました。

あれだけ自慢していた宝石が、一瞬で石ころに変わったときにお母様の絶望した顔。

思い出しただけで、笑いだしそうになる……


「どうせならお母様の部屋のコレクション全部、同じにならないかしら……」


お母様だから身に着けてるもの以外にも、部屋にたくさん宝石をコレクションしてるはずだわ。

それらも同じように、ただの石ころ同然の状態にならないかなー、と私は思っていると……


「嫌ァァァァーーーーーーー!!!!!!」


とお母様の悲鳴が聞こえてきました。

あら?私が把握できてない宝石にも魔法が効いたわ。


これは新しい発見ね。




発見にご協力いただき、ありがとうございます……お母様。

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