第7話 家族

「僕の家族になってみない?」


「え?……」


 俺から放った突然の言葉にルーナは困惑し固まっている。

 そりゃそうだろう突然今日初めてあった男にこんな意味不明な事言われたら誰だって混乱する。

 もちろん、俺がこの提案をしたのには意味がある。



「いや実は僕の妹のことなんだけど……」


俺は彼女に母のことや、セシリアが今も家にひとりでお腹を空かせて待っていることなどを軽く説明した。



「…セシリアには友達もしくは家族のような存在が必要だと思うんだ。

 ただ僕がいない間は家からだす訳にはいかないから友達は作れない。

 だから僕がいない間にセシリアを見てくれる人が、そして仲良くしてくれる人が必要なんだ。

どうだろう?

行くあてもないなら僕の所に来て欲しい。

勿論君にはある程度のお金と食べ物は用意するよ。」





「…わたしのこと、怖くないの?」



ルーナは小さな声で不安を打ち明ける



「どこが?」


我ながら酷い返しだと思う。

これは彼女を傷つけるかもしれないから。


「…わたしに『魔族の血』がながれてること。」


…正直に言えばただの人間ではないとわかっていた。

髪の色、瞳の色、つくりものの様に美しいその容姿、魔力の量や質、そのどれもが普通の人間とは違う。


魔族。人類の敵であり、普通の魔物よりも数段強く、狡猾なものたちを指す。

時に人に化け、人の言葉を使って人を騙したり、その圧倒的な力によって破壊をもたらす者。


 人間にとって、魔族は最大の恐怖の対象であり、その血を少しでも引いてるだけで迫害の対象となる。


ただそれがどうした、

んなこたぁ関係ない!

ルーナのこと知れば知るほど不思議と心が躍る。それが何かわからなくても彼女しかいない 

じゃないとだめだと彼女に何かを感じるんだ

だから俺は彼女に賭ける


「ふふん、僕は強いからね!

君のことなんてちっとも怖くなんてないよ。

それどころかどんな敵からでも君を守ることだって出来るんだよ?

だからね。お願い 僕と一緒に来てよ 」


「…うん、わかった。わたし、ついていく」



「ありがとう。これからよろしくねルーナ?」


俺は彼女に手を差し出した



あれからは盗賊2体の処理をしたり、ルーナと一緒に川で釣り(合計で鮭に似た魚3匹の収穫)

をして家()に戻った



「ただいま〜」


「おかえり!おにいちゃん!」


家に帰るとトテトテっと走ってきたセシリアに勢いよく抱きつかれる。

頭を撫でて少し経つと


「おにいちゃんそのひとだあれ?」


「セシリアに紹介するよ

 この人はルーナ。

 セシリアのお姉ちゃんになるひとだよ。」


「おねえちゃん?」


「ああ。そうだ」


「セシリアにはおにいちゃんしかいないよ?」


…何でこんなにかわいいんだろ?



「 そうだね。でも、セシリアはお姉ちゃん欲しくないの?」




「ほしい!」



「でしょ? だからねセシリア

お姉ちゃんと仲良くするんだよ」


「うん! セシリアなかよくする! 」


「えらいぞ、セシリア」


「にへへ」


かわいい。やはりかわいい



「ルーナ、紹介するよ。

僕の妹のセシリア どう可愛いでしょ?」


「ルーナおねえちゃん!なかよくしよ! 」


「うん。よろしく…セシリアちゃん」


「そうだ。セシリア、ルーナお姉ちゃんに家にある物を紹介するといいよ。

その間にお兄ちゃんがご飯作るから


 今日は釣ってきた魚もいれておいしいのをつくるから楽しみにしててね 」


「わかった! セシリアはルーナおねえちゃんにしょうかいして、ごはんたのしみにする!」


「かんべきだ!えらいよセシリア。」


「えっへん!」


と胸を張るセシリアに笑顔が溢れる




「そうだルーナ食べられないものってある?」


「えっと、ありません」


「了解だよ、じゃあセシリアをよろしくね」


 ◇


それからは魔法も使い料理を完成させた




「よし!出来上がりだよ

 セシリア〜 おいで〜」


「いいにおい!おいしそう!!」

 

と言ってセシリアはすぐ駆けつけてきた


「ありがとうセシリア

この料理はシチューっていうんだよ」


そう俺が作ったのはクリームシチュー

あったかくて、トロッとしてて、甘いクリームソースがおいしいやつだ。



「しちゅうおいしそう!」


粗末な机に木製の椀に注いだシチューとバケットを並べる


ルーナにスプーンを渡し、「やけどしないように気をつけてね」と声をかける


そしてセシリアは「はやく、はやく!」 と急かされてしまった



「あわてないことだよセシリア

しちゅーは熱いから危ないんだ。」


「う、うん、でもはやくでもたべたいんだもん」


「そう言ってくれるのはうれしいよ。

まずスプーンにとって冷ましてから口に運ぶんだ。ふーふー はい、あーん」


セシリアの小さな口にシチューを運ぶ

それをパクっとくらいつくセシリア


「はふっ…ん、おいしー

しちゅうおいしい、すき」


目を細めご満悦なセシリア。

追加をご所望のようなのでおこたえしてまた一口ずつ運んでいく


ルーナの方は上品にスプーンで掬い、未知なる料理をおそるおそる口に運んで含み


「…あったかい」

 

と呟いていた






だんだんシチューも食べやすくなり、いまのセシリアはひとりでスプーンを扱いルーナと黙々と一緒に食べている

彼女達は美味しそうに俺の作った料理を食べてくれる。とても心地よい



やがて2人は料理を食べ終わり先ほどの家の紹介に戻った。俺はといえばやっとシチューを平らげ、片付けに入ったところだ。



 脳は暇なので、少しこれからの予定でも考えるとするか。

 ルーナという名の少女を拾ったこの出会いは俺のエルフ生に大きな変化をもたらすかもしれない

 そもそもルクスとしての生き方はまずセシリアを守り、育てきることを目標としている。

 そこにもう1人加わるのだ。

そしてルーナ本人だか彼女には大きな力がある

あれはただのちょっとした先祖返りなんかじゃない、もっと強大だなものだ

たぶん今はその力をうまく扱えないのだと思うが

きっとこれを狙ってくる奴は多い。

 昼間の盗賊もそうなんだろう。




先ずは衣食住そして生活水準を改善すること

次に彼女を狙うものを徹底的に潰すこと

そして彼女にもっと強くなってもらうこと

最後にそれ以上に俺が強くなること


なかなかの目標だかこれを達成しないと未来はないのだ。やるしかなかろう


そんなことを考えてる内にセシリアはルーナに興味が尽きないのかアタックを開始していた。



セシリアからの猛攻を俺が引き継ぎ、目標を立ててからこんなにもすぐに、夢なかばで、倒れてしまうのは想定外だった…

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