第15話犯人を城へ呼び出す
旅行に来ていた隣国の侯爵令嬢のアンネは呼び出しを受け、登城していた。
目の前には母国の第三王子がいる。
彼女はテルマ王子を随分前から狙っていた。そして隣国に用事で出かけていることを知り、彼女はこっそり追いかけた。
どうにかしてお近付きになりたい。上手くいけば王子妃よ。私の美貌は自分で言うのもなんだけど、武器になるわ。
実際は第一、第二王子のお眼鏡にもかからなかったので、第三を狙ってるのだが。
だが、接触方法を考えてる最中この国の城に呼び出され、目の前にテルマがいて会話をする事態になっている。
「不思議そうだね。エルダール侯爵令嬢。何故呼び出されたか思いつかない感じだけど?」
「は、はい。」
だって、私が何をしたか殿下は知らないはず。
「正確に言うとね、呼び出したのは僕じゃないよ。ここはそもそも他国の城だ。僕は用事で数日滞在させてもらってる隣国の王子ってだけ。
君を呼び出したのはこの国の王太子だよ。」
そうテルマが告げると部屋の奥からイーサンが姿をみせた。
初めて見るイーサンの姿にアンネは頬を赤くし、目をうるうるさせる。カーテシーも忘れて。
テルマ殿下は素敵だけど、この王太子もかっこいい!
その様子にイーサンがテルマに呟く。
「この令嬢の考えがわかり易すぎるな。」
「本当に。」
テルマが答える。
「はじめまして。マルディア国のエルダール侯爵令嬢。」
「は、はじめまして。」
アンネは声が上擦る。カーテシーも慌てて行うが所作が乱れる。
「君を呼び出したのは他でもない、我が国のクラーク公爵令嬢であるシルヴィア嬢の件についてだ。」
「え?」
アンネはドキッとした。彼女はもう発見されたのか?
「知らないとは言わせないよ?
君がどの程度の危害を加えようと考えていたのか知らないけど、一応教えてあげる。
シルヴィアは無事だよ。自力で森の安全な所まで移動してきたしね。相手が悪かったね?エルダール侯爵令嬢。
君はシルヴィアのことをあまり知らなかったようだ。」
イーサンの表情が冷たい笑顔になっている事に気付き、アンネは恐怖を覚える。
怖い。それに無事だと言った?
何で?森の奥に捨ててくるよう頼んだはずよ。
怪我してなくても普通のご令嬢がそんなに早く脱出できる訳が。
「シ、シルヴィア様がどうかしたのですか?
それにシルヴィア様のことは我が国の学園で知存じておりました。
テルマ殿下ともとても仲良くされていて。」
「ん?」
テルマが眉を動かす。
何となく彼女の行動の動機が読めた気がした。
「確かに僕はシルヴィアと非常に仲の良い友人だよ。飛び級という共通点があったしね。
まさかとは思うが、君、変な思い込みしてないかい?」
テルマが腕を組み、首を傾けながらアンネに聞く。
「テルマ王子。恐らくその変な思い込みの意図するものに彼女は気づいてないと思うけど?」
イーサンが突っ込む。
「それは、その思い込みというのは、私が殿下とシルヴィア様が恋仲だと思ってるという事ですか?」
「関係ないわけではないけど、僕が言う思い込みはそこじゃないなぁ。」
テルマが返事をし、続けてイーサンが話す。
「ほらね。理解してない。余程自分に自信があるんだろうね。
それよりも君、僕は先程『知らないとは言わせないよ』と伝えたと思うけど?
君、無計画過ぎて、あちこちに証拠残し過ぎなんだよね。
恐らくテルマ王子狙いでシルヴィアを変な眼で見てたんだろうけどさ。
不敬どころじゃない。僕からしたら君は地獄へ堕ちろ状態だよ?」
イーサンは冷気が漂ってきそうな位、優しさの消えた表情だった。
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