④-3
琥珀色の目がのどかに優しい眼差しを向けた。
ートクンー
じわっと熱を宿した血が鎖骨から首のあたりまで小さく移動した。
のどかは安らぎに包まれて言葉を失った。
父親と母親の心中、兄の消失、姉の変わり果てた姿。
好意を寄せていた人が別の人と結婚すること、会社での嫌がらせ、そして、自分自身の病。
それでものどかは普通に周りに馴染んで生きることが正しいこの世の中に、喉元まで込み上げている叫び声を感情とともに無くして、溶け込もうとした。
起きて、着替えて、働いて、帰って、寝る。
あと僅かだと告げられた日々も変わらずに過ごす。
誰がわかってくれようか、
誰が共感してくれようか、
誰にもわかってもらえない、
誰にもわかってほしくない、
泥に埋もれて歩くようなこの人生。
帰宅の電車、窓に反射で映る自分の姿は街に消えそうなほど脆いが、消えてはくれない。
...消えたくなんてない。
心が動かないようになっていたのに
琥珀色の瞳が、冷えついた心を溶かすように見つめていた。
目覚めたら、こじらせていた風邪が治っている次の日のような気分。
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