④-2
朝、瞼を開ける。
ベッドの上は居心地がいいから目覚めを遅れさせようとしてくる。だけど、その時間が最近は無駄になってしまうと思う。後少しの命なんてありきたりな台詞回しだが、わたしにはもう日数がない。
手を広げて裏をみると血管が浮き出て、どことなく肌の色が白くなった気がする。浮き出たそれをみていると、2日前のあの窪んだ気色の悪い目を思い出した。あれは一体何だったんだろう。理解不能なことで、床に倒れ込んだことは現実だったのか夢だったのかと聞かれると、夢としか思えない事柄だった。
現実だったら困る。
どこにいって診察をして貰えばいいかわからない。
誰かに話したら精神内科を勧められるような可笑しな話だ。
わたしの命が終わっても、世界の時計が止まるわけじゃない。だからわたしも、自分の時計が止まるまでは止まることはできない。
いつも通り起き上がり、支度をして家を出た。
進行していくわたしの病状と行き慣れた道。
いつも通り歩けて、景色を見れて、電車にも乗れて、どこも悪いところを感じない。
定期的に変わる車内のポスターに絵本のようなタッチの新幹線が描かれていた。
"誰かの大切な人を運んでいます。"
わたしも、誰かの、大切な人。
「あほか」
左耳に聞こえてきた声に背筋が凍る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます