第10話 街の景色
門の衛兵に背負われている僕は足の痛みとゴツゴツとした鉄の鎧に覆われている衛兵さんの感触を感じながら教会に向かっていた。
「すごいね、アレックス!周りに建ってる家がみんなすごく大きいよ!それにすごく人が多い!今日はお祭りか何かかな?」
「いやいや何時もこんな物だぜ?街には色んな村から出稼ぎに来たり、あるいは単純に街に憧れて引っ越してきたりするんだからな。自然と人は多くなるもんだ」
村から出てきたばかりの僕にはどこを見ても知らない人がいることや整然と並んだ家々等、何もかもが新鮮に見える。
ふと隣を見るとアレックスも口を半開きにして周りをキョロキョロ見回しながらしながら歩いているせいで時折前から来た通行人とぶつかりそうになっていた。
そんな状態のまま歩く事しばらく、大通りから横道に外れると少し道の幅が狭くなり、雰囲気も大通りの華やかな感じはなりを潜めた。
そこには鎧やローブを着て、武器を持った人と普通の格好をした人が半々になって歩いており店も調理道具や服を売っていたのからお酒を売るような店がどんどん増えて行った。
「ほ、本当にこっちであっているんだよな?なんかその、雰囲気がちょっと物々しいというか、物騒だぞ??」
「あぁ、こっちであっているかさ。お前ら冒険者を目指すって言ってたろ?だから民衆用の教会じゃなくて冒険者たちがよく使っている方の教会に案内しようと思ってな。まあ、こっちの方が近いって言うのもあるんだが」
詳しく聞くとどうやら冒険者ギルドと教会は隣同士にあるそうで、怪我をしやすい立場にいる冒険者を街に入ってすぐに治療出来るような体制を作っているらしい。
「さあ、着いたぞ、ここが教会だ」
「え、ここが?」
教会といえば僕のイメージだけどすごく白くて綺麗、っていうイメージがあったんだけど、ここの教会は少し汚い、というか石造りなんだけど何故かボコボコと不自然に穴が空いており入口の扉はそもそも最初から無かったかのごとくぽっかりと口が空いてしまっていた。
衛兵はその中に平然とした様子で僕を背負ったまま入って行く。
入った先の入口の横にはカウンターが着いておりシスターが受付をしてくれるようで先に入っていった冒険者らしき人に何かを渡している。
何かを渡された人は奥に進んでいき、横並びになって並んでいる木のベンチに座った。
見るとそこには怪我をしたのであろう冒険者たちが各々怪我をした場所を抑えながらガヤガヤと治療の順番が来るのを待っている。
順番待ちの先には、部屋の一番奥に神父がステンドグラスを背にして立っており、魔法を使って冒険者を治療を施していた。
「なんか、凄いね」
「言いたいことは分かるが、あまり悪く言うなよ?神父は自ら進んで冒険者たちの治療に来たとかいうめちゃくちゃいい人だしな。あと、俺が付き添いできるのはここまでなんだ。治療が終わったらしっかり冒険者登録をしておくんだぞ?あぁ、そうそう冒険者ギルドでは宿の斡旋もしている。初めて街に来たヤツらは足元見られてぼったくられたりするからな。しつかり斡旋してもらえ?」
「色々ありがとうございました!!」
そう言うと衛兵のおじさんは僕をアレックスの背中に移して、僕たちに背を向けたまま、また門の方向に向かって歩き出し、僕たちに背を向けたまま手を振ってくれた。
「じゃあ、行こっか」
「そうだな。...えっと、シスターさん、こいつの治療をしてやって欲しいんだけど」
「承りました。よろしければ寄付等をして頂けるととてもありがたいのですが...」
そう言ってシスターは陶器のお皿をこちらに差し出してくる。ここにお金を入れろということなのだろう。
正直そんなに余裕は体的な意味でも金銭的な意味でもないのだけど300バーツくらいなら何とか払える、かな?
ちなみにさっき通った大通りにある古着店で300バーツでは少し古びているような服しか買えそうになかった。新し目の古着なんてのは余裕で1000バーツを超えていたし。
「これでいい、ですか?」
「はい、ありがとうございます。あなた方に神の御加護があらんことを」
シスターはそう言って神様に祈りを捧げてくれたけどなんだか凄く悲しいものを見るような、もしくは蔑むような、なんとも言えない目をしていた。
「ではこれを持って席でお待ちください」
木札に57と番号が書かれたものを貰い冒険者たちが座っているベンチの方を手で指し示した。
「なんか感じ悪ぃな。行こうぜ?」
「う、うん。そうだね」
アレックスはゆっくりと僕をベンチへと下ろし自身も座った。
することも無いのでボー、っと治療の様子を見ているとアレックスはだんだん頭で船を漕ぎ始めているのに気づいた。
夜もずっと歩き続けてくれてたもんね。おつかれさま、それとおやすみアレックス。すぐに起こすことにはなると思うけど今は少しでも休んで。
「次の方〜、57番の方は前に出てきてください」
あ、やっと僕の番が来た。
ふと横を見ると完全にアレックスは俯いて眠ってしまっているようで、仕方なく僕はいむ足を引きずりながら神父の元へと向かったのだった。
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