第2話

 彼女の行き先は、私も何度か世話になった市立病院だった。

「あまり、体が強くないんです。でも、それに負けていたら、人生つまらなくなってしまいますから。元気もりもり、笑顔満開ですよ」

 本当に、結さんは満開の花のような笑顔の人で、私はついどきりとしてしまった。

 彼女を見送った後、私はここのバス停からなら家の近くまでバスが通っていたことを思い出して、バス停に向かった。

 すると、都合良く家の方面のバスがやってきて、誰もいない車内に、私は乗り込んだ。

 流石に、倒れてズボンが濡れたままの状態で座席に座る訳にもいかず、吊り革に掴まっていると、誰もいなかった車内、ドアも開いていないのに、足音が聴こえた。

 びっくりして振り向くと、さっきの少女が立っていた。

 ……いや、少女というのは、ぱっと見た印象だったので、こうしてしっかりと相対すると、不適切であったことに気づいた。

 すらりと身長が高く、所謂モデル体型な彼女は、私の隣に立って、告げた。

「残念だけど、君も、彼女も、そう長くない」

「……は?」

「私はメソレム。彼女の故郷の死神の一人。訳あって、ここにいる」

 待て、死神? 彼女の故郷? どういうことだ?

「今は考えなくてもいい。いつか説明する。それより、君たちはあと一年で、その生を終える」

「それは……それは、変えられないのか? 例えば、私の命を彼女にあげるとか」

 ふるふると首を振るメソレムとかいう死神は、

「君は彼女を幸せにしないと行けない。そう運命づけられているから」

 最後に、それだけ語って、瞬きをした瞬間に、死神は姿も形も無く消えていた。

『――次は、大善橋、大善橋』

 ……車内アナウンスで、現実に引き戻された。次で降りないと。

 まだ降りしきる雨の中、さっきの死神の言葉を思い出し、私はどうすればいいのかと、夜の闇の中、家に帰った。

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