第2話
2話
「フェン、とってきてくれてありがとな。ほら、『汚れを落とす魔法』 これでよし。捌くのは……どうしよ、道具がねぇな」
フェンリルのフェンがとってきてくれた、ボア系の魔物を前にして考える。
納屋にある粗末な剣で捌く、のが一番無難か。
そして火がない。納屋の食料は火がなくても食べられる保存食ばかりだしな。火はひとまず諦めるか。
「攻撃魔法が使えたらよかったんだけどな」
俺は攻撃魔法はつかえない。いわゆる、ファイアボールだとか、サンダースピアだとかの事だ。ファイアボールがあれば、火種にはなっただろう。
だが、それ以外ならある程度は何とかなる。
「ローストビーフ風。ボアならローストポークか?」
切り分けた肉を手に持ち、まずは『人体に著しい害のあるものを除去する魔法』で除菌。それから『手の温度を操作する魔法』で加熱。これは手の平の温度をだいたい0℃から100℃まで自在に変えられる魔法だ。
これで、ゆっくりローストしていく。
「よし、いいか。まあ最悪、生でもいいんだが……ほら、フェン。一口食え」
「バウ」
フェンに焼きたてを一口やる。
俺も食べる。うん、肉は美味い。が、やっぱ調味料がほしいな。
納屋から干し肉をもってきて、張り付いた塩を剥がしてボア肉につけて食べる。うん、これだ。
そこそこの大きさの肉塊を食べたので、俺は満足。
フェンには残りをやる。一応、除菌はしたから生でいいぞ。汚してもいいけど散らかさないでくれ。
手と顔を『汚れを落とす魔法』で綺麗にして、今後の事を考える。
まず、生きること。これが最重要だな。
で、生きるために。食う、寝る、遊ぶ。
寝るのは大丈夫だ。シーツだけは綺麗だし、掛け布団も用意した。フェン、ふわふわなんだ。
遊ぶのは、どうだろう。迷宮があるって言われてたから、遊べるだろう。
そして、食う。
これは、肉は狩りでなんとかなる。フェンは優秀なので。そして俺は今の体だと少食なので。
問題は肉以外。野菜、果物、魚、穀物。
「種はある。が、植えてどうにかなるものか? ああ、なんか魔法あったかな」
『耕す魔法』はある。
『植物を病気に強くする魔法』もある。
毎日やる水がない。『虫除けの魔法』はあるけど鳥とかが来たら困るな。
「とりあえず植えておくか。水……血はダメだろ。木々から拝借するか」
『触れた水を集めて溜める魔法』で、朝露を集めよう。飲水もこれでなんとか。
「水を溜めておく桶か樽みたいなのもほしいな。つくるか」
壁から出て、木をフェンに切ってもらう。
『倒木を切断する魔法』、『木の皮を剥ぐ魔法』、『木を乾燥させる魔法』、『木を変形させる魔法』をつかい、木の深めの桶と、ついでにカトラリー系をつくっておいた。スプーンかわいい。
あとは明日の朝早くに起きて、森で水を集めれば。
とりあえず、畑はなんとかなるか?
「川とか近くにないかな。『地下水脈を探す魔法』は……ああ、真下にある! 明日は掘る作業だな」
初日はこんなもんかな。
それから壁の内側の土地の整備を少しだけして、暗くなる前に寝る準備。
フェンを掛け布団として、ぐっすり眠った。
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