39 借金(晋&凪)

「今日約束の日だけど」


 夜になって兄に電話をかけた。ふうっ、とため息のようなものが聞こえ、こう返された。


「悪い。無理だった」

「たった三万円だよ?」

「電気代払ったら残らなかった」

「……今すぐ来て」


 僕はタバコを吸って兄が来るのを待った。兄に貸した金は合計すると五十万円くらいになっていた。少しずつでいいから返してくれと言っていたのだが、それも滞りはじめた。


なぎ、すまん」


 玄関で頭を垂れる兄。とりあえず一発殴った。


「早く入って」


 兄はボロボロのスニーカーを脱いだ。服も毛玉だらけのニットだ。ヒゲも伸びていて、汚ならしいったらありゃしない。


「凪……」

「本当にどうしようもないね。仕事行ってるの?」

「今月は雨が多かったから、現場少なくて……」

「それでも生活費切り詰めれば何とかなるでしょ。またパチンコ行った?」

「増やせると思ったんだ」

「このクズ」


 さらにもう一発。兄は床に倒れた。


「もういいよ。来月まで延ばしてあげるから、脱ぎなよ」


 兄は大人しく僕の言うとおりにした。僕は兄をベッドに突き飛ばし、指を入れた。


「ほぐしてきてるじゃん」

「痛いの、嫌だから……」


 金がないなら身体で支払えよ。そう言って関係を持たせてもう一年になる。最初は抵抗していた兄だったが、こうして自分から準備をするようになるまで落ちぶれた。


「本当に金返す気ある? それともこうして無理やりされるのが病み付きになった?」

「そんなこと……ないっ……」


 兄の吐息は荒くなっていった。僕の背中にしがみつき、何度も何度も僕の名前を呼んできた。こんなに情けない姿を知っているのは僕だけだろう。


「すっかり中で感じるようになったね。それだけ金返してないってことだよ。反省してる?」

「してる……してるからぁ……」


 僕は指を引っこ抜いて舐め、自分の下着をおろした。


「ほら、やって」


 正直、兄にさせても下手なので自分でしごいた方が早いのだが、立場をわからせるためにも毎回やらせていた。

 兄がおそるおそるくわえてきたので、一気に喉の奥を突いた。ちょっとぐらい苦しませないと仕置きにはならない。何度か動かしてから引き抜いた。


「けほっ……けほっ……」


 涙目で僕を見上げてくるその表情。ぞくぞくする。借金がある限り、兄は僕のものだ。


「嫌だったら早く全額返すんだよ」


 僕は兄の髪の毛を掴んで引っ張り、またくわえさせた。まだ夜は長い。たっぷりと支払ってもらおうじゃないか。

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