25 シガーキス(大和&俊哉)

 どうせ築年数の古い所だからと、兄貴は構わず室内でタバコを吸っていた。壁紙はすっかり黄ばみ、独特の香りが染み付いていた。退去の時にどうなるのかな、とは思うが、今のところ兄貴が引っ越す予定もなく十年以上ここに住み続けていた。


俊哉としや、あれやりたいんだけど」

「何だよ」

「シガーキス」


 兄貴の奴め、また妙なことを言い始めた。あれは案外うまくいかないんだと、やったことはないが知っていた。


「難しいぞ、兄貴」

「まあやってみようや」


 火をつけたのは兄だった。俺はタバコをくわえ、触れさせて、息を吸った。やはり、なかなか火は移らなかった。そのうちに、兄のタバコはどんどん小さくなっていった。


「ほらな」

「もう一本だけ」

「これが最後だぞ」


 今度は火がついた。俺は紫煙を吐き出し、兄貴の頭を撫でた。


「兄貴、これで満足?」

「ああ。味はどうだ?」

「いつもと変わらねぇよ」


 タバコを教えてきたのは兄だった。両親は苦手だったので、バレないように最初は気を付けていたものだ。

 しかし、俺も兄貴も立派なアラフォー。兄弟で楽しんでしまっているから、二人とも嫁を連れてこない。それでも仕事はきちんとしているから、一応の名目は立っていた。

 二人同時に吸い殻を落とし、手を握った。兄貴も白髪が出るようになってきたな、と前髪を見つめた。


「俊哉」

「何さ」

「する?」

「わざわざ聞かなくてもいいよ」


 俺たちはついばむようにキスをした。ベッドになだれこみ、互いの服を脱がせ合った。


「俊哉、着込みすぎ」

「冷えるんだよ。年食うとそうならないか?」

「オレはまだ大丈夫」


 素肌を触れ合わせ、さすり、またキスをした。兄貴が上に乗ってきた。


「舐めていいか?」

「なんで今日はいちいち聞くんだよ、いつも勝手にするくせに」

「そういう気分なんだよ」


 兄貴は俺の乳首を強く吸った。最初はそうされても何の感情も起こらなかったが、今ではとても気持ちいい。俺は遠慮せずに喘ぎ声を出した。


「俊哉、可愛い」

「はっ……もう、こんなオッサンだけどな……」


 俺はもう、兄貴にすっかり依存している。彼無しでは成り立たない。タバコと同じだ。すぐに手に取れるところになくちゃならない。


「次、どうされたい?」

「だから、聞くなって兄貴……好きにしろよ……」

「じゃあ、そうするぞ」


 やめない。やめるつもりなんてない。俺たちはこれでいいんだ。何も間違っていない。

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