約束のブラッド・ライン

岩間 孝

プロローグ

 ぼくにはたまに見る夢がある。


 ――緑に包まれた大地。

 ゆっくりと風が吹き、丘を覆う草原が大海原の波のようにうねっている。

 そこに、穏やかに微笑むお腹の大きな女性が座っている。

 女性はゆったりとした白いワンピースを身に纏い、長い髪は緩やかになびく。


 しばらくすると、ふくよかで優しげなその女性のお腹からは小さな双葉の植物が芽吹く。そして、大きな樹へと成長していくのだ。


 やがて、その女性は樹の養分となり、大きな樹そのものへと変化する。そして、花が咲き、花が枯れると多くの種がこぼれ落ちる。

 地面にこぼれ落ちた種からまた芽が出て大きくなるのだけれど、不思議なことにそれは樹にはならず、小さな子どもへと変化する。その子どもはおそらくぼく自身。


 この夢を見た後、目覚めると、いつも涙を流している。

 悲しいわけじゃなくて、懐かしさから泣いているような、そんな感じだ。


 こんなこと、実際にあるはずがないのに、自分で体験した記憶のような……。そんな夢なのだ。

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