第1話
今日も、いつもと変わらない一日だった。平凡で代わり映えのない一日。そして、孤独な一日だ。
ぼく――
学校に仲のいい友人は一人もいない。休み時間も、誰にも話しかけられずに過ぎていく。いじめというよりは無視されているというのが一番近かった。
高校に上がる前は、それなりに友だちもいたんだけどな。脳裏にふと、小学生の頃に引っ越していった仲の良かった友だちの顔が浮かび、ため息をつく。頭の後ろで手を組んで、暗くなった空を見上げた。秋特有の薄い雲のエッジに、太陽の残滓が僅かに残っている。
ゆっくりと吹いてきた風が前髪を巻き上げた。ぼくは我に返って前髪を押さえると、バス停へと向かって歩いた。しばらく進んで、近道の公園の方へ曲がる。公園の中を進んでいると、ふと何かが焦げたような匂いが混じっているような気がして足を止めた。
鼻を鳴らし、周りを見渡すが、変な匂いもしないし、おかしな様子もなかった。気のせいかと思っていると、それまで盛大に響いていた秋の虫の声が一斉に止まった。
何だ? そう思った途端、ゴウッッ!! と、これまで聞いたことの無い轟音が耳をつんざいた。
音につられて空を見上げると、目に白く光る流れ星のようなものが映った。もの凄いスピードで視界に迫ってくるそれに、ぼくは恐怖した。体が固まり、ただ見あげるしかできないぼくの頭上を轟音とともに、あっという間に通り過ぎる。
遅れてきた強風が髪を巻き上げ、焦げ臭い匂いが強く鼻を突いた。
ヤバイ。落ちるっ! ぼくは衝撃に耐えようと地面にしゃがみ込んで身構えた。だが、衝撃は起きず、音も光も同時に消えた。
一瞬の静寂の後、再び、虫が鳴き出した。
今のは何だったんだ!? ぼくは流れ星らしきものが消えた方角を見て、首を傾げた。あの強烈な光と風、そして匂い。突然止まった虫の鳴き声。それらの全てが、あれが気のせいではなかったことを物語っていた。
ぼくは呆然と空を見上げ、しばらくして我に返ると、バス停へと歩き始めた。頭の中は混乱していたが、何が何やら分からないというのが本当のところだった。
「えっ。嘘だろ……?」
思わず呟いて近づく。それは髪の長い少女だった。最初はマネキンかとも思ったが、すぐにそうではないことが分かった。
生成りのワンピースに黒髪のロングヘアー、そして真っ白な肌。明らかに生きている人間だ。年は十代の半ばくらいか。閉じた目を長い
何と形容すればいいのか分からないくらい綺麗で、ぼくは息を飲んだ。一瞬、死んでいるんじゃないかと思ったが、胸が緩く上下しているところから見て、生きてはいるようだった。
死んでないんだったら、大丈夫かな。安堵の息を吐いて、ぼくは一旦通り過ぎたが、すぐに戻ってきて少女の傍らに膝をついた。息をしているからといって大丈夫だとは限らない。危険な状況なら、救急車を呼ぶ必要もあるかもしれないのだ。
「ねえ。大丈夫ですか?」
ぼくは肩を揺らして声をかけた。激しく動かさないよう気を遣いながら何度か繰り返すと、少女の
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