由利編

 段ボールを開けたらなかには、やりなおしの飴と書かれたラベルの貼ってあるビンとカードが一枚入っていた。カードには

【後悔していることはありませんか?

 あの頃に戻りたい、もう一度やりなおしたい。

 そんなあなたの願い叶えます。

 方法は簡単。この取扱説明書とともに入っていたビンの飴を食べるだけ。

 食べるときに戻りたい頃のことを思うだけで、簡単に過去に戻れます。】

と書かれていた。

 やりなおしの飴とか本当に存在するんだ。いや、待てよ。なんか怪しくないか。よくわからない送り主だったし、信じていいのかな。いろんな考えが頭を駆け巡る。でも、過去に戻れるなら少しの可能性に賭けるのもなしじゃないかもしれない。それにしても後悔していることね、、、。



 私は元々医学部志望だった。私が小学生の頃に妹が病気で入院したときに、医者ってすごいなと思って医者になりたいと思った。幸い頭もそんなに悪くなかったから中学校一年生の頃から塾に通って、県トップの高校に進学することができた。高校に入るまでは、順風満帆な人生だったように思える。小学校は受験に合格して、付属中学校のある小学校に入れたし、中学校では学年の上位層にはいた。塾の模試ではいつも名前がランキングに入るぐらいの成績だった。県トップの高校にも入れるよって塾の先生にも友達にも家族にも言われた。その高校の受験はやっぱり大変だったけど、頑張って頑張って頑張って合格した。もしかして天才なのかななんて思ったけど、入試の合格順位を見てそんなのが勘違いだったって思い知らされた。天才じゃなかったとしても努力したらなんだってできると思ってた。でも、無理だった。学校の授業についていくので精一杯で、模試の順位はどんどん落ちていく。結局、医学部の受験すらできなくて、でも自分のプライドが許さなくてただそれだけの理由で歯学部に進むことにした。



 もし、医学部を受験していたら受かってたかもしれないし、落ちたとしても浪人すればよかった。できることならもう一度あの頃に戻ってもう一度やり直したい。でもいいの。この選択をしたのは私だから全ての結果を受け入れて背負っていかないといけないの。私は、やりなおしの飴を段ボールごとごみ箱に捨てた。

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