プレイ
「なっ」
なぜわかると言いそうになり慌てて口を閉じる。
「今鼓動がはやくなったねぇ」
胸に耳をあててにちゃつくわかばさんの表情は歪だ。面白がっているのか、悲しんでるのか、わからないがごきげんはななめなのは確かだろう。
「だれとやったんだい?」
「やってないですよ」
「本当に?」
「はい、僕の反応しないですから」
「ふむ」
視線を落として股間を眺める。「ふーん」と意味深な相槌をうってからわかばさんは僕の身体から起き上がり、畳に座りなおした。
「食べさせて」
「えぇ」
「はやく」
あぁやっぱり怒っていた。こうなるとこの人は梃子でも自分の意見を変えない。
「鮭フレークいっぱいのっけてくれたまへ」
金魚のように口だけ開けて僕がお粥を運ぶのを待っている。
四の五の言うのは諦めてお粥を口に運ぶとわかばさんは咀嚼に神経を集中させていた。
「お風呂に入りたいのだが」
食べ終わるまで無言を貫いて、何を喋るのかと思ったらこれだ。
「温泉いきます?」
「ここのでいいじゃないか」
「一緒に外にでましょうよ」
「まだ明るいねぇ」
「明るい方がいいじゃないですか」
「……いやだ。ここがいい」
「そうですか、じゃあお湯ためますから」
「きみも付き合いたまへよ」
少しだけ語尾が強かった。わかばさんのまなざしはしっかりと僕を射抜き、たぶん今日はもう逃がしてくれそうにない。
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