私もそう思う。
波の音を聴きながら、私はクッキーの家へと向かう。この町での私の拠点は間違いなく彼女の家だし、他に行き場がなかった。
砂浜をゆっくりと進む。一昨日、私はここでクッキーと再会して、逃げ出したんだ。
今はアンと一緒に歩いている。
アンは裸足になって、クッキーの靴を手にもっている。
自由気ままに波打ち際でパシャパシャと波と触れる感覚を楽しんでいるのか、ご満悦だ。
「やば。ほんとヤバいね。海ってあーし何年ぶりなんだろ」
私も地元は波の音が聴ける町だったからあまりありがたみを感じなかったが、アンにとってはこれが貴重な体験なんだろう。
「あーしの親、こーゆーレジャーとかめっきりでさー」
勝手に一人で話している。アンはこっちが何も言ってないのに、話題があっちへ行ったりこっちへ行ったりする。学校でもずっとそうだった。本当に彼女は還ってきたのだ。
「てか、どこ向かってるんだっけ?」
「えっと……私の友人の家。ひと休みさせてもらおう」
ほど良いところで砂浜から離れて、舗装された道路を進む。しばらく行くと青い屋根のきながら、私はクッキーの家へと向かう。この町での私の拠点は間違いなく彼女の家だし、他に行き場がなかった。
砂浜をゆっくりと進む。一昨日、私はここでクッキーと再会して、逃げ出したんだ。
今はアンと一緒に歩いている。
アンは裸足になって、クッキーの靴を手にもっている。
自由気ままに波打ち際でパシャパシャと波と触れる感覚を楽しんでいるのか、ご満悦だ。
「やば。ほんとヤバいね。海ってあーし何年ぶりなんだろ」
私も地元は波の音が聴ける町だったからあまりありがたみを感じなかったが、アンにとってはこれが貴重な体験なんだろう。
「あーしの親、こーゆーレジャーとかめっきりでさー」
勝手に一人で話している。アンはこっちが何も言ってないのに、話題があっちへ行ったりこっちへ行ったりする。学校でもずっとそうだった。本当に彼女は還ってきたのだ。
「てか、どこ向かってるんだっけ?」
「えっと……私の友人の家。ひと休みさせてもらおう」
ほど良いところで砂浜から離れて、舗装された道路を進む。しばらく行くと青い屋根の小さなアパートを前にして「ここ」とエントランスを潜った。アンが後に続く。
「え~。なんかちょっと古いね」
歯に衣着せぬ物言いだが事実だ。埃っぽく、カビ臭い。
共用地の廊下を進み、102のプレートがかかったドアの前で立ち止まった。
旧式の鍵は開いたままだ。なにせ私が開けっ放しで出てきたのだから。そこまでして気が付いた。クッキー宛てのメモを机に残したままだ。アンにこの家の主がクッキーであることがわかってしまうのは、どれほどの影響があるかわからない。とにかくここで立ち止まっていては不自然だ。
扉をゆっくり開ける。
私が先に入って靴を脱ぐ。アンが後ろから部屋の中を見て何やら興奮していた。
「中はけっこうイケてるじゃん!」
うん。私もそう思う。
「だよね」
心地の良い木々の香り。一つのダイニングテーブルを囲むように、ソファーが一つと椅子が二つ置かれたリビング。ソファーの上には、ふんわりとしたクッション。テーブルの上には、キャンドルが置かれている。
奥にあるキッチンには確かに人が住んでいた証があちこちに見受けられる。
自然と涙が瞼からこぼれそうになる。ぐっとこらえて、袖で顔をぬぐった。
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