第76話

 次の瞬間、分銅のふいた鎖を千代女はふるっていた一本、二本、と炎に焼かれてもがく鬼の手足に巻きつけ、それを星熊童子に渡した。

「見苦しいぞ、暴れるな」

 星熊童子が千代女から受け取った鎖を引っ張ると、相手の鬼の腕や脚が砕ける音がする。苦痛で集中できないせいか、攻撃の意図がないせいかあっけなく身動きのできない状態へと相手は陥った。

 なれど――決して楽な戦いではなかった。それが千代女の感想だ。

 こちらが事前に襲撃を予想し、備えた上でさらに連携をなしえたからこその勝利だった。

 そもそも、ここにメルショルは“いない”。

 千代女たちの“影武者”とともに、本来の談合のために指定した支城で天使と交渉の席についているはずだ。

 ここにいるのは、メルショルと天使の側の談合の噂を複数、それぞれの筋に流し、どこが襲われるかを見極めるための策戦だったのだ。これにより、地獄の側では誰が刺客を放っているかを特定する手筈なのだ。

 おかげでおおよその検討はついた。あとは、透波として身につけた拷問、尋問の手管を尽くして捕えた鬼に知りうることすべてを吐かすのみだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る