第56話
こちらはザビエルと違って天使だ。ただし、ウリエルのように高潔な風情ではなくどこか怠惰な雰囲気を漂わせている。癖の強い髪を伸ばした様は軟弱で、武人ばかりの陣中には不似合だった。
「シャムシエル、おまえはしゃしゃり出てくるな」
ウリエルが苦々しい顔になって彼に目を向ける。
とりあえずメルショルへの非難は止んだ。だが、やはり面と向かって裏切り者呼ばわりされたことはひどくこたえている。
このあいだの、伊予之二嶋で地蜘蛛の子の死を軽く扱う鬼と切支丹の所業がかさねる部分に気づいてからは、メルショルの心は急速に切支丹からはなれていたが、それでもかつてみずからを支える拠り所とした、神の僕(しもべ)たる天使に罵倒されるのは辛いものがあった。
命を狙われても死にかけても和議の仲介役となったことに後悔はおぼえなかったが、いまはじめてメルショルはその念に襲われる。他方で、たやすく心が揺れ動く自分の弱さが恥ずかしかった。命を落とす者すら出ているというのに――。
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