第47話
「毒を、風に乗せたか」
道鬼斎が相手の手管を看破した。となればおそらく、床下の地蜘蛛の子供が死んだのは隙間から漏れたものを吸い込んでしまったのだろう。おのれ、子供を巻き込みおって――メルショルは総身が一気に燃え上がるのを感じた。脳裏にはみずからが守れなかった命の灯(ひ)がよぎる。
「正答だ」
廊下の角を曲がって濡れ縁をおりて一匹の鬼、緑色の肌をした鬼卒が近づいてくる。風を読むことによほどに長けているのか、発する声が距離を隔てていてもさして大きな声ではないというのにはっきりと聞こえる。
「風に乗せて吐いた俺の毒の息を吸い込んだお前たちは、このまま身動きひとつできないままに死ぬ。まさか氷雨が殺されるとは思わなかったが」
それでも勝負はついた、といわんばかりだ。事実、このままでは十中八九そうなる。
次の瞬間、千代女の部屋のほうで轟音がとどろいた。
ファヌエルが鬼道を炸裂させたのだろう。奇襲にきたのだから、相手は当然白兵戦に臨んでいたはずだ、おそらく跡形もなく消えうせたはずだ。仲間の無事が確認できて、こんな状態だというのにメルショルの心に安堵の念がわいた。
「南蛮浄土の化物め」
毒息使いの鬼が舌打ちしながら最早けりはついたとばかりに、こちらに背を向けて建物のほうへ近づいて行こうとする。無念――メルショルは闇にほとんど呑み込まれつつある視界で相手の姿を見送るしかことしかできなかった。
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