第45話
突如として室内に冷気が生じる。頭上から降った鬼がふるった太刀の一撃が、刃を受けた床を中心として三尺四方ほど凍りつかせたのだ。
また、もう一匹の鬼も鬼道こそ使わなかったが、ふるった棒の一撃は肋骨を左右とも均等に粉砕してなおお釣りがくる、そんな猛烈な一閃だった。
体捌きで、すばやく転がって、力強く跳んで、メルショルたちは攻撃をなんとか避けた。善鬼、メルショルが真っ先に狙ったのは鬼道を使わなかった鬼だ。
が、黄泉戸喫を経てまだ日の浅いメルショルの身の素早さは比較的、ふつうの人間のそれに近く攻撃を仕掛けるはずが逆に先手を取られた。その最中、脇をすり抜けた善鬼の一撃が相手の一閃と迅雷の速度で衝突した。一刀斎の教えた太刀筋は体を左右に開くことは少なく、正面から斬撃をくり出すことを一義とする。
刃が刃の上を滑り、小手を裂いても止まらずそのまま喉が突き破られた。新陰流のできることなら相手の命を奪わずに済ませる太刀筋とはあきらかに一線を画する動きだった。
餌食となったのは鬼のほうだ。師に疎まれたとはいえ、その業前は後世に名を残した小野次郎衛門父子をも超えるやもしれぬ遣い手だ、生半可な剣技など彼の前では稚技に等しい。
同時に、もう一体の敵と交刃したメルショルは腕を凍りつかされた。
そんな錯覚に襲われる。斬撃を摺り落とす動作をおこなうや柄から手を離したおかげで氷漬けは避けられたのだ。ただ、手は霜焼けに覆われており、痛みと痒みの入り混じった感覚に襲われた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます