第42話 【10月12日】
ボクの性格が他の友人たちと違うと感じたのは大学の頃だった。その頃ボクには一応付き合っていた彼氏がいて、それはそれで普通の恋愛をしていた(つもり)。しかしその時、ボクの近くに或る女性が現れるようになった。
「何を探しているの?」
図書館でレポート用の本を探していた私に声をかけたのは、研究室で時折顔を合わせる程度の先輩、Jだった。Jはよほど暇だったのか、ボクの本の捜索作業を手伝ってくれ、ボクはそのお礼に彼女をお茶に誘った。
「あなたのレポート、前に読ませてもらったことあるよ」
ボクは彼女の思いがけない言葉に目を丸くしていたと思う。Jはそんなボクを見て、一瞬とても素敵な笑みを浮かべ、やがて遠くに目をやった。「あなたの文章って情報を伝えてるっていうより、逆に何かを必死で見えなくさせてるって感じよね、読んでる人に」
ボクは言われてる事が呑み込めなかった。彼女は続けた。
「でも、そうされると人ってかえってその見えないものを探したくなるの。そして気がついたときはいろんなことを考えてる。あなたの文章ってそんなところがあるのよ」
やはり分からなかった。褒められてるのか、けなされてるのか、その推察さえ当時のボクにはできなかった。
「今度家にも遊びに来なさいよ」
そうやってJが渡してくれたのは彼女の実家の住所と電話番号だった。「こんなもの、渡されても」と最初は躊躇したが、結局ボクが受け取ることにしたのは彼女のボクを見る目の強さのせいかも知れない。それからボクたちはその場で別れ、それからひと月以上顔を合わせなかった。
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