第29話 【9月29日】

 早いものでもう9月も一日を残すだけだ。すっかり外の風も冷めて気を抜くと秋の空気を感じるようになった。

 このひと月で2キロ近く痩せることができた。この結果が多いのか少ないのか自分では今ひとつ分からないが、どっちみち先は長い。焦らない。

 このところダイエットには慣れてきたが、季節柄食欲をそそられることが多い。面倒臭がりやのボクは、夏場はソーメンだけで夕食を済ませることがあるくらい麺好きだが、さすがに肌寒くなった今はご飯と汁物が恋しい。ただし炭水化物の取り過ぎはダイエットの天敵だ。用心。

 ボクは人と飲食を共にすることはほとんどない。嫌いと云うより自分の素を曝け出すようでどうにも居心地悪いのだ。だから高級レストランなどめったなことがない限り足を踏み入れない。先日は職場近くの居酒屋で一人ホッケと格闘しているところを同僚に見つかって、翌日「声かけようと思ったんですけどね」と妙に気の毒そうな顔をされてしまった。「ホッケならぬ、ほっとけ、だよな。森川君?」課長がいつになく上機嫌でそう言うので、一瞬ボクの中で殺気が吹き抜けた。あぶない、あぶない。

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