志帆の賭け
結局、今夜はポートマンさんがこの家に泊まることになった。
志帆の提案通り、明日の朝、俺はポートマンさんに料理を作らないといけない。
俺はベッドの中で考えた。
そこで認めてもらえないと、俺と志帆は引き離されてしまうわけだ。
せっかくできた妹なのに、それは嫌だ。
父と母が離婚して姉もこの家を去って。家族同然だった幼馴染の葉月にも振られて。俺は孤独だった。
小牧家の使用人たちは俺に親切だし、俺に期待をしてくれている。
だけど、彼らはやっぱり家族とは違う。
俺には家族らしい家族はいなかった。けれど、志帆という妹ができた。
とても可愛くて、俺の料理を喜んで食べてくれて、俺のことを理解してくれる。
そんな彼女を失うことなんて、俺にはできそうにない。それに、今の志帆は俺にとって、単なる義妹じゃない。
婚約者でもあるわけだ。これは父の決めたことだけど、志帆はむしろ望んでいることのようでもあった。
俺は……どうだろう? 志帆と結婚しているところを想像してしまう。
志帆は子供の人数まで口にしていたし。志帆が子供を生むということで。
それはつまり、エッチなこともするということで……!
悶々としながら、俺は寝返りを打つ。
早く寝ないといけないのに、これでは寝られそうにない。
でも、寝られそうにないのは、俺だけではなかったようだ。
「……兄さん? 起きてますか?」
きれいに澄んだ声がする。アイドルのように可愛らしい声だ。
いや、実際にアイドルなのだけれど。
志帆だ。
俺は慌てて寝床から起き上がる。明かりをつけようとすると、俺の手を小さな手が押さえた。
そして、暗がりの中、志帆の息遣いがする。
柔らかい感触が俺の腰のあたりに乗っかった。
志帆がベッドの上の俺に、馬乗りになったらしい。
「志帆!?」
「静かにしてください。ママが起きちゃいますから……」
「いやいやいや、起きてこなくても問題だよ。こんな……」
「夜這いみたいなこと、ですか?」
志帆はそう言うと、指先で俺の腹のあたりをなぞる。
そのくすぐったい感触に俺はどきりとする。
「兄さん、あたしが何をしに来たか、わかっていますよね?」
志帆の甘い吐息が俺の耳朶を打つ。
その下半身は、俺の下半身と密着している。
志帆を強烈に女として意識させられ、俺は動揺した。
「志帆、俺たちはまだ十五歳で……」
「もう十五歳ですよ。子供だって作れます」
志帆はそんなことを言い、そのまま俺にしなだれかかる。スタイルの良い身体の全身が俺の身体と重なった。
柔らかくて大きな胸が、俺の胸へと押し当てられる。
「なんでこんなことを……?」
「お風呂も一緒に入ったのに今更ですよね?」
「あれはさ、まだ兄妹のスキンシップだって、説明できたよ」
「それ、本気で言ってます?」
まあ、無理があるとは思う。志帆は裸になって、風呂場で欲しい子供の人数まで口にしていたのだから。
あのとき、ポートマンさんが現れなければ……どうなっていたかわからない。
そして、今、志帆はその続きをしようとしているわけだ。
志帆は言う。
「あたし、不安なんです。兄さんと引き離されて、またアイドルに復帰したら、普通の女の子になれません。あたしは学校に通って、家で遊んで、素敵な男の子と恋をする生活を送りたいのに」
ポートマンさんはそれを許していない。志帆をエトワール・サンドリヨンに復帰させようとしている。
そうなれば、志帆はふたたびアイドルとしての生活を余儀なくされる。
光が強すぎる場所は影も濃い。
志帆はアイドルとしての栄光と引き換えに、普通の青春を失ってしまうだろう。
「だから、あたしはここで決着をつけたいんです。に、兄さんが……その……あたしのことを抱けば、あたしはアイドルとして復帰できなくなりますよね」
そう言って、志帆は身体を上下させ、俺に胸をこすりつける。荒い息遣いで「んっ」と志帆は小さな声を上げる。
小柄な十五歳にしては大きな志帆の胸の感触に俺は平常心を失いそうになった。
志帆は甘い声で「兄さんの好きにしていいんですよ」とささやく。
「……ポートマンさんが許さないよ。こんなこと……」
「だからこそ、です。既成事実を作ってしまえば、ママにはどうしようもできないでしょう? 実菜たちだって口出しできません」
「でも、その後は?」
「兄さんと付き合っているって公言します。不祥事になったってかまいません。これはあたしが決めたことですから。それに……子供ができたら、もっと確実にアイドルをやめられます」
志帆は力強く言う。
彼女の決意は固いようだった。たしかに志帆の言う通りにすれば、彼女が俺と引き離されることはなくなるかもしれない。
俺が父と交渉すれば、結果次第では二人暮らしも続けられるだろう。
だけど、本当にそれでいいんだろうか?
俺の手が照明のリモコンにあたり、部屋の電気がつく。
志帆は「きゃっ」と悲鳴を上げる。その顔は真っ赤だった。
大胆なネグリジェは胸元が大きく開いていて、肌が透けてすら見える。
志帆は慌てた様子で胸を手で隠すが、その拍子に志帆の胸が少し揺れた。
「兄さん、恥ずかしいです……。電気、消してください」
「それは……できないよ。それに、俺たちが結婚するとしても、それは将来のことだ」
「結婚は将来の話じゃなくてもいいんです。兄さん、今ここで、あたしと結婚してくださいませんか?」
<あとがき>
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