ドゥーネ東京支部

「真美さん、この書類を会議室までお願いできますか?」

この若い男性は八戸灯治。

年齢は真美の1つ下であるが、若くしてドゥーネ東京支部の役職者である。


「はあーい。」


「あ、灯治さん、ここにいらっしゃいましたか。」


「峰岡さん、どうかしました?」


「検診の準備ができましたので。その後15時から会議、18時から東京支部財務部の旗辺課長との面談とが入っています。」


峰岡は、八戸灯治の親代わりであり、秘書のようなものである。

八戸の親は両親ともに所在不明で、八戸は幼少期から施設で育てられた。

世界超有数の組織であるドゥーネは、日本の各地にも支部が置かれている。

ドゥーネという組織が世界各国に影響力や人気があるのはチップ唯一の製造会社であるだけではなく、児童福祉の運営を行い、社会への貢献も大きいということがある。

私立の学校を兼ねた児童福祉施設を独自で建立し、親を亡くした等で身寄りのない子どもたちを預かり、教育を無償で施している。

ドゥーネの幹部の中には施設育ちの人間も多く採用されており、世間の噂好きな親世代の人間からは自分たちで育てるよりも施設に預けた方が将来安泰ではないかという声さえ聞こえてくる。


「峰岡さん、いつもありがとうございます。それでは、真美さん。後はお願いしますね。」


「分かりました。」


八戸は真美に対し、軽くお辞儀をしてその場をあとにした。


「よし、やりますか。」

真美は大量の書類の山を目の前にして、気合十分にスーツの両袖をまくる。

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ユレネイド oira @oira0718

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