平静
「それでは、今日の講義はこれで終了です。」
教授が一礼をして、講義室をあとにする。
さて、と。
俺は、いつもの講義室に向かおうと身支度を整える。
こうしている僅か数分だが、周りの学生の色んな声が意識をしなくても耳に入ってくる。
その風景は何となくひとっぽくて居心地が良い。
たまにわざとゆっくりと片付けをすることもある。
「はぁ。なんで興味もない講義に出席して90分も座り続けないといけないんだよ。」
「ほんとだよな。この時間毎日バイトしてたらかなりもらえるのにな。」
「確かに。でも、教授たちもさ大変だよな。」
「ん?何が?」
「だって、半数以上、もしかしたら出席者全員が自分の話に興味が無いのを感じながら、90分も話すんだぜ?苦行じゃん。」
「そう言われるとそうだな。」
「俺なんか、中学生対象の塾講師のバイトしてて、生徒の中に一人だけ遊びに来てるようなやついるけど、たった一人いるだけでもそのクラスの授業の時はかなり気持ちがしんどいもんな。」
「でもさ、そういう場合って、すぐに親がチップ入れたりするもんじゃないの?」
「そうだよねー。」
「でも、入れても本人と相性悪かったり、成長期で体質変わったりするからね。チップを頻繁に変えながらの子どももいるし、安定しないその時期は結構周りも辛いかもね。」
・・・・。
ゆっくりせずに、さっさと退室しておけば聞かなくて済んだ話もあったのに。
2分前の自分の行動にいら立ちを感じながら、俺は講義室を立ち去る。
「今日はまっすぐ帰ろう。」
俺は足早に自宅へと足を進めた。
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