第41話 皇帝ザクスエルト

 空は少しだけ赤みを帯びてきていた。四人は次はどこに行くか話していると空から何かが地上に下りてきた。皆が視線を向けるとそこに居たのは皇帝ザクスエルト一世だった。

「陛下」

 ミリアは皇帝ザクスエルトの所に駆け寄っていく。

「よく無事でいてくれた姫よ」

 ミリアを抱擁する皇帝ザクスエルト。

 ザクスエルトはゴルドリンの方を見て「首が繋がってよかったなゴルドリン」

 跪いてゴルドリンは「はい陛下」

 ミリアはプリシラたちを手で指し示して

「この者たちが魔族によって化け物にされた私を救ってくれたのです」

「おおそうかお前たちが」

 小夜の前に来た皇帝は、小夜の手を握る。

「よくやってくれたな、ありがとう勇気ある子供たちよ」

「い、いえ困っている人を助けるのは当然の事です」

「手を見せてくれないか」

 両手のひらを皇帝に見せる小夜。

「大きな手だな」

 この子が回復魔法でミリアを癒したのか。しかしヒールでは化け物を元に戻すことなど出来まい。

 そして小夜の上腕の外側を両手でつかむ

「しっかりしているな」

 次はプリシラの前に立ち全身を眺める。恐縮しているプリシラはもじもじと上目遣いで皇帝を見る。

 急に皇帝の顔が険しくなり「どういうことだ?」

「は?」

「何故お前が魔王ファザリスの腕を付けているのだ?」

「え?パパの腕だったのこれ?」

 間の抜けた答えに余計に腹の立った皇帝は「お前が大陸の人間達に見合うだけの者なのか試させよ。私の必殺剣を受けてみるがいい」

「またこの展開なの?」

 それを聞いたミリアは「陛下如何なされたのです?その者たちは私を助けたのですよ」

 他の兵士も「陛下おやめください」と言っている。

 わけがわからないゴルドリンは、オロオロするだけだった。

 プリシラと距離を取った皇帝ザクスエルトは「剣を抜け小娘」

 そして大きく通る声で叫んだ「必殺皇明剣」

 さすがミリアの父、町中に響く声、血は争えない。

 混乱するプリシラは、新しく付けたベルトに慣れていないので剣を鞘から抜くことが出来ない。

「あ、あれ?どうやって剣を抜けばいいのこれ?」


 溜めの姿勢に限界を感じた皇帝ザクスエルトは「遅過ぎる。もう腰が持たんわ」と言って皇明剣を放つ。

 凄まじい衝撃波の煌めきはプリシラの頭上に消えてゆく。やっと剣を抜いたプリシラは構えようとするが、皇帝ザクスエルトは呆れ顔で「もう止めよ」と言った。

 プリシラの前に来て「お前は全然駄目だ。なぜ魔王がお前に右腕を与えたのかさっぱりわからぬ。まったく期待外れだ」

 プリシラは半泣きで小夜の方を見る。

「なんか好きでもない相手に振られた気分だよ小夜ちゃん」

 プリシラの顔を見た小夜は怒り出し「このおじさんはお姉さんの良いところが全くわかっていません」

 プリシラの手を取り、宿酒場の方向に歩き出す。

 そして大きな声で「こんな人が皇帝なんて大陸の不幸です。お姉さんの方がよっぽど役に立ってます」

 一人の兵士が剣に手をかけ「おい。陛下に向かって、不敬だぞ」

 後ろの兵士を制する皇帝ザクスエルト。

「よいのだ。行かせてやれ」

 小夜の後姿を見ていた皇帝ザクスエルトは何故か微笑を浮かべた。そして踵を返し、反対方向へ歩き出した。ミリアはあわててザクスエルトの後を追いかける。

「陛下待って下さい。父上」

 ゴルドリン達、帝国兵士もミリアについてゆく。


 その場に一人、ぽつんと取り残される守。

「ちょっと俺を忘れないでくれよ」

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