第25話 オヤナ村3
「君たちはこの村で生まれたの?」
「いや俺たちはこの村にやってきたんだ」
「この村にいるのはほとんどが親がいない子供たちなんだよ。村長がスカウトするんだ。俺もそうだったんだけど」
「お前は犬小屋で飼われてて本当に酷かったな守」
「まあ悪くはなかったけどね」
「君たちもその年で凄い過去があるのね」
小夜はうつむいて楽しくなさそうだ。
それを見た勇者は
「なあ姉ちゃんはこれからどうするんだ?」
「私はもう一度パパ、いや魔王ファザリスと話がしたいと思ってる。もう以前のパパではないかもしれないけど、あんな別れ方じゃ何も分からないし」
「パパ?」子供たちは顔を見合わせる。
「でも人間界に慣れる為にもう少し村に居させてもらっていいかな?私は魔族しか知らないからあなたたちに凄く興味があるし」
「もちろんですお姉さん。ゆっくりしていって下さい」
小夜はうれしそうだ。
「初めて魔界を出て会ったのが、あなた達みたいな良い人でよかったよ」
それを聞いた村長はプリシラの方を向いて
「体は回復してきてるようだが、まだ病み上がりだから村で英気を養っていきなさい。このあたりにも盗賊が出るようになったから準備も必要だろう」
小夜はプリシラの服をじっと見る。
「姫様がこんな古着じゃ可哀そうです。明日お姉さんと町に服を買いに行くことにします。おじいちゃんいいですよね?」
「あ、ああいいだろう」
どうせ一度決めたら、わしの言う事なんか聞かんだろう小夜は。
「町には鍛冶屋もあるのでお姉さんの護身用の武器も打ってもらいましょう」
「俺もガトーさんにこの前スゲーいい武器打ってもらったしな。今は武器が入用でかなり忙しいって言ってたぞ」
勇者は村長の方を向いて
「村長俺も一緒に町に行っていいよな?盗賊が出るなら護衛が必要だろ」
「勇者、お前は駄目だ」
「なんでだよ?」
「お前は美味いものを食べに町に行きたいだけだろ。この前金を持たせたら全部食い物に使ってきたからな。もう何度も一人で町に行ってるし今回は留守番だ」
「じゃあ二人の護衛はどうするんだ?」
「それは守に頼むから」
「えーそりゃないぜ」
「盗賊程度なら3人いればなんとかなるだろ」
「それじゃあ今日はこの村を私が案内しますねお姉さん」と小夜はプリシラの手を引く。
二人の少年も付いていく。
「ちょっと待ってくれ」と村長が止める。
「娘よ。村にいる間はその魔族の手をいつも隠しておくのだ。村の者たちに余計な疑念を抱かせない方がいい。もし手を見られたらこの村にはいられないと思ったほうが良い。それと娘を案内してる途中でいいから、皆で村の近くの開けた丘に来てくれんか?」
村長は小夜の方を向いて「場所はわかるな小夜?」
「はい、おじいちゃん。お昼頃には向かいますね」
家の外に出た小夜は、プリシラと繋いだ手を大きく振ってうれしそうに歩く。
「小夜ちゃんは元気いいね」
「小夜は姉ちゃんが来てから、いつもより元気がいいんだよ」
「村の姉ちゃん達とは全然違うもんな」
「お前はそればっかり言ってるな守」
村の人達はプリシラを見つけると指を差したり、何かを話していたりしたが、プリシラは悪い気はしなかった。自分が同じ人間の中にいるという喜びと、開放感に浸っていた。
小夜は村の井戸を案内し、水の重要性を説明する。
村は切り立った崖、森に囲まれ外から見え難くなっている事も説明した。
「へーえ凄いんだね。この村は誰も見つけられないね」
「姉ちゃんは何故かこの村を見つけたけどな」
「私は運ばれてきただけだから」
勇者は歩きながら、プリシラをじっと見ている。
「誰に?どうやって?村の入り口は物見櫓があって、村の人達が交代して監視してるんだぞ」
気まずい雰囲気になったのでプリシラは
「私以外に誰か村に入ってくる人はいないの?」
「案内されて来る人か、村人だけだよ。ここは本当に入り口が分かりにくい。だから隠れ里と言われているんだよ」と守。
「あとは魔族だな」
勇者がボソッと言う。
「遠出したゴブリンがたまに何匹が迷い込んでくるんだ。この村を見つけた魔族は絶対生きて返すなと村長に言われてる。帰って仲間を呼ばれたら、この村は終わりだからな。だからこの村は皆魔族には敏感なんだ」
「そうなんだね」と言って自分の右手を見るプリシラ。
子供たちは川の漁場と森の狩場をプリシラに案内した後、村長の待つ丘の上に皆で向かった。
丘の上には、もう村長が来ていた。
「おお来たか」
「それでなんの用事なんだよ村長?」
村長は持っていた剣をプリシラに渡す。
「ちょっと勇者と手合わせしてくれんか?」
「ええ?」
「どういうことだ村長?」
「わしはその魔族の右手がただの飾りだとは思っていない。その手の強さがどの程度か知りたいのだ」
「でも姫様が剣なんか扱えるのか?」
「勇者君、甘く見ないでよね。私はゴブリン一匹くらいなら倒せるよ」
「それじゃあちょっと相手してやるか」
勇者はガトーに打ってもらった新型剣をベルトの鞘から抜く。
「頑張ってお姉さん」
小夜と守はプリシラを応援する。
「俺はどうでもいいのか?薄情な奴等だな」
プリシラは右手に持っている剣の重みを全く感じない。
「あれ?こんなに軽かったっけ?」
勇者は完全に舐めた感じで斬りかかる。
「覚悟しろよ姉ちゃん、うおー」
それをプリシラは捌こうとすると
ギィン
プリシラの剣が折れ飛んで、勇者が持っていた剣が手から落ちた。
勇者の両手は強くしびれて感覚が無くなり、両ひざを着く。
「なんだ今のは?」
「あ、ごめんなさい勇者くん。私何かやっちゃいましたか?」
涙目になる勇者。
「そのセリフは止めてくれよ姉ちゃん」
「危なかったかもしれん」
村長が口を開く。
「両方ともガトーが打った新型剣だったら、お前の手は千切れてたかもしれんぞ勇者」
「こわっ」
「一応ヒールしときますね勇者くん」
勇者の手に緑の輝きが吸い込まれる。
手を握ったり開いたりして元に戻ったことを確認する勇者。
「その魔族の腕はかなり上位の者の腕だな。魔法は使えるか?」
「魔法?断熱魔法くらいしか知らないけど」
「なんだそれは?」
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