認識

 恐る恐る、周囲を見る。


 昼の午後。

 学校の帰宅時間と重なっているからか、学生が多く

 その誰もが、私を見てヒソヒソ話をしていた。




 スマホを向けられ、撮影された。



 ここ数日、何度も合った事だ。




 ――撮られた……何を?



 ふと、正面を見た。

 バスの窓ガラスだ。



 ピンクのロンパースを着た、しかしどう見ても大人の自分が映っていた。




 "ピンポーン 次、止まります"




 思わず、手が伸びた。

 焦燥に反し、穏やかな音声案内。





 "車内事故防止の為、バスが停まってから、席をお立ちください"



 点灯しているボタンを連打しても、連続して音声は鳴らない。


(早く……早く降ろして!)


 無我夢中で連打したが、なにか早くなるなんてことはない。




 やがてハザードの音が聞こえ、バスが停車した。


"若葉ヶ崎 若葉ヶ崎でございます"




 ものすごい速さで降りた。

 途中座席や柱等にもぶつかったが、構わず走った。



 ガシャン、ブー


 交通ICの料金不足の音が聞こえたが、構わず降車した。






(ここ……どこ!?)



 降りたこともない、知らない場所。

 だが、少なくともここは大通りであった。





 私の姿を見た通行人が、バス内の乗客たちのように私を指差し、スマホを向ける。



「と、撮らないでぇ!」

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