人の姫
両親は、とても有能な人だったと思う。
人に頼られ、適切に人を頼り、人間関係の形成も完璧だったんだと思う。
そんな親元だから、「不自由なんて一つもない」ってよく言われてたっけ。
両親はあんまり家にいないけど、2人に信頼されてる執事がずっと家にいて、勝手に外出しようとすると怒られて。それくらいは楽しかったんだけどね。
だけど、
私を羨ましく思った人かな、もう誰かわかんないけど、学校に行ったら上履きが無くなってたんだ。スリッパって言った方がいいかな?
まぁなんにせよ、俗に言ういじめのひとつだったんだと思う。
スリッパが無くて困ってる私を笑ってる人も居たからさ、少なくとも嫌がらせだとは分かったんだ。
帰ってからそれを執事さんに伝えたら、「明日からは学校に行かなくていい。」って言われて...
うん、本当に学校に行く必要が無くなった。
勉強は家庭教師を雇って、私は部屋を出なくても勉強が出来るようになったし、トレーニングルームもあったから、執事さんが定期的に一緒にトレーニングしたりで、本当に家から出ることが無くなったの。
欲しいものは言えば貰えたし、お店限定のものだってお店の人を呼ぶくらいには、してくれていたんだ。
でもほら、最初は楽しいかもしれないけど、それはつまらないでしょう?
私は、何にもできてなかったから。
まるでおままごとの人形みたいだなって思ったの。
だから、中学に行ってみたいって言ったの。
さすがの大人も、学校を持ってくるなんてできないから、渋々ではあったけど、中学に行くことを許してくれた。
私立で、お金がいっぱい必要な中学校だけど、そこならきっといじめなんて少ないだろうって。
でもね、入ったら、いじめられている人がいたんだ。
私はどうしてか、その人を助けなきゃって思ったの。昔の私みたいに、みんなに疎まれている気がしたから、1人だけでも味方にならなきゃって。
それが良い事で悪い事だったのは今でもわかるんだけど、でも、初めて「友達」ができた瞬間だったと思う。
その子とは仲良くなれたんだけど、途中から来てイジメ相手を助けた私は、色んな人に疎まれちゃって、でも、学校は辞めたくないから、親にはバレないように隠してた。
私の友達が、遺言に残したのは、私も一緒にいじめられていたこと。
だから中学には行けなくなったし、家を出れなくなっちゃったけど、私にだけの遺書も用意されてたの。
「きっと君は、家を出れなくなるけれど、もし、君さえ良ければ、わがままを聞いて欲しい。
見れなかった世界の良さを、こっちに来たときに聞かせて欲しい。
得られなかった自由を、教えてほしい。
2人分の自由を、感じてきて欲しい。
...世間知らずには分かりにくいかな。
まぁ、後先考えずその家から飛び出して、優しい誰かの元で幸せに暮らして欲しい。
君の望みを叶えられなくてごめんね。
でも、幸せじゃない夢なんて、きっと辛いだけだから、君の幸せを願って、君の願いを壊してしまったんだ。ごめん。」
だから、私は家を抜け出して、今に至るんだ。
私の願いよりも、私の幸せを願ってくれた人のために生きてる。
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