第30話

2025年  1月 28日

最近おどろおどろしい夢は見なくなったが過去のデータはしっかり記憶に刻まれている。

夢は本当に不思議だ。

夢占いでは様々な理屈をこねて、水に打たれる夢はこんな深層心理があるとか

火事の夢はどうとか、夢判断なさる先生方は高い所から仰いますが何の事はない。

私に言わせれば夢判断も地震予想も、当たるも八卦当たらぬも八卦と私は受け止めている。しかし、戦争や津波、火事、壮絶な暴力を受けた人の心には医学用語で云うPTSDが発症するであろう事は理解できる。その心の傷が形を変えて夢を媒体に攻撃してくるのだ。そして、人によってはそこから二次災害を引き起こして一層苦しむ様になるらしい。

人間の心と云うものは全く複雑で奇怪なものである。

占いに振り回される方々が多いという事実は知っているが、これで政治を……となると、一気にドン引きだ。つまり、占いも宗教と同じで一種の「麻薬」なんだろうなあ……と考えさせられる。


私の悪夢の温床は父親の暴力にある。

極めて劣悪な環境で育った私だが、何がイヤだと言って包丁を振り回して追いかけ回すのだからたまったもんじゃない。 おかげでこのトラウマから、毎日ではないが何十年も悪夢と闘わざるを得なかった。

夢の中で、父親は必ず金槌を手にして私を探し回り見つけると容赦なく金槌を振り下ろしてくるのだ。

私は唯々逃げまどい息を殺して隠れるのだが最後は必ず見つかって金槌で打たれまくるのだ。夢の中だから痛みの感覚はないがとにかくオソロシイ……


この繰り返される悪夢に打ち勝ったのは50歳頃だったと思う。

いつも通り打たれまくっている私の、いつもは眠っている感情に突然途轍もない怒りが芽生えた。父親の振り下ろす金槌を取り上げるとか、掴みかかると云う事ではない。父親の顔を正面から捉え 「うるさい!」と怒鳴っただけである。途端に、それまで鬼の形相で金槌を振り回していた父親の顔が哀しく歪んだ。そしてあっけなく消えた。

その後も何度か夢の中に現れたがどこかコソコソして金槌を振り回す事もなくなったが、この頃から「ゴジラ」が頻繫に登場し出した。そして「ゴジラ」の陰には必ず父親の影が見え隠れしていた。火を噴く「ゴジラ」とはひたすら追いかけっこである。

「ゴジラ」の放った焔が必ず私を外すと云う事はつまり、殺すつもりはないか他に理由があるはずだ。私は子供の頃から「ゴジラ」のフアンだったので「ゴジラ」との追いかけっこは結構気に入っていたがコソコソついて来る父親は論外である。

まさかね、と、思うが「ゴジラ」は父親のサービス?ご機嫌取りだった?


夢は本当に不思議である。最近の夢は「ゴジラ」ではないものとの追いかけっこだが、こんな事を文字にしているうち新しいエピソードが湧いてきて また暫くこのページから離れる事になった。


―――森永卓郎さん お疲れ様でした ご冥福をお祈り申し上げます―――


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