第23話 全面戦争の予感
ジウはヴァルキリー隊に拘束された。
格闘術には自信のあったジウでも武装したヴァルキリー隊には敵わなかった。
小銃の銃底でボコボコにされ、意識を失った後、縄でグルグル巻きにされていた。
警察に引き渡されるのかと思ったが、ヴァルキリー隊は装甲車の上に彼を乗せ、そのまま、宮殿へと戻っていく。
宮殿へ戻ると、ジウは手荒く、装甲車から引きずり落とされる。
「ご苦労だった」
彼女達を待っていたのはファナ女史と警務侍女達だった。
サラはファナ女史に敬礼をする。
「指示通り、主犯格っぽい者を警察に引き渡さず、連れてきました」
サラは手錠を両手足に掛けたジウを床に放り捨てる。
「うむ・・・こいつか。強情そうだな」
ファナ女史は片目で睨むようにジウを眺める。
「そいつを尋問室へ連れて行け」
そう命じられて、警務侍女はジウを引き摺るように連れて行く。
尋問室には幾つか存在する。
簡易尋問室はただの個室である。
軽犯罪や規律違反程度なら、ここで済ませる。
一般尋問室となると重犯罪までを扱う為、録音装置やマジックミラーによる観察などが行えるようになっている。
そして、特別尋問室。
尋問室となっているが、拷問を行う為に器具が設置されている。
血飛沫などで汚れる事が前提なので、水洗いが出来るようなっている。
ジウは特別尋問室へと連れて来られた。
明らかに悪意に満ちた器具の数々を直視したジウは一瞬、冷や汗が出る。
「捕虜のご、拷問は・・・国際法違反だろ?」
ジウがそう言うと、仮面を被った尋問官はその節穴のような目の部分の奥にある瞳を輝かせる。
「捕虜?・・・お前はただの犯罪者だ。国際法には触れないよ」
そう呟くと、尋問官達は手際よく、器具を準備する。
彼女達の姿は感染予防の観点から全身を防水性の素材で出来たツナギを着て、ゴム長靴、ゴム手袋、そして、顔を覆う仮面となっている。仮面は素顔を見せない以外に血飛沫などが掛からないようにするためのものだ。
「こ、殺せ・・・どうせ殺すんだろ?」
ジウは焦りながら叫ぶ。
「殺す?それはお前次第だ。我々は協力者には寛容だよ?」
尋問官の一人が答える。ジウはそれを聞いてたじろぐ。
多分、嘘だ。彼はそう確信していた。
今まで、逮捕された多くの工作員は帰ってきていない。
そして、それは帝国でも同様の処置がなされているから。
「ふむ・・・まずは基本的なところからいくかね」
そう言うと、尋問官の一人がジウの右手の人差し指を軽々と折った。
あまりに簡単に折るので、一瞬、ジウは何事かと思い、黙った。
そして、激痛からの悲鳴。
尋問官は折った指を痛みを探るようにグリグリと捻くり回す。
あまりの激痛にジウは涙を流して苦悶する。
そして、1時間の内に両手の指が折られた。
ジウは激痛に耐え続け、何も喋らなかった。
彼がこの仕事に就く時、高給を約束されたと同時に何かあれば、家族に危害が及ぶと脅されていた。故に何も喋らなかった。
拷問で苦痛を与えたとしても死すら覚悟を決めた者には通用しない事が多い。
だが、それで諦める事は無かった。
近世において、化学が進歩し、多くの薬剤や毒が研究された。
その成果の一つが自白剤である。
自白剤とは秘密を吐露させるための薬品である。
実際には幻覚や神経を麻痺させる事で本人の意識を朦朧とさせ、質問に答え易くさせる為の薬品を指す。
ジウの腕に金属製の注射器が挿された。
薬品がジウの体内に流れ込む。途端に彼の体の中が熱くなる。
やがて、彼は気持ち悪くなってきた。
景色が歪むような感じになり、徐々に何も考えられなくなっていく。
「薬が効いてきたな。では質問だ。お前の名前は?」
その問い掛けに焦点の合わない瞳のまま、ジウは答える。
「ジ・・・ジウ」
「ジウか。年齢は?」
「3、3、36歳」
「仕事は?」
「猟師」
「家族は?」
「妻と・・・子どもが2人」
「何故、この国に来た?」
「うぅううう・・・・」
「何故、この国に来た?」
「テロを起こす為」
「誰に命じられた?」
「マギウスの諜報部だ」
ジウは項垂れたまま、呟くように吐露する。
やがて、彼は意識を失った。
「今日はこれが限界ですね」
「そうだな。まぁ、想像通りの答えだったがね」
尋問官達はジウを独房へと連れて行った。
まともな手当もされず、連日、自白剤を打たれたジウが廃人となり、死亡するまで、1週間も掛からなかった。
マギウス社会主義共和国
半島初の社会主義国家であった。
王政が労働者階級の革命によって、打倒され、樹立された国家だった。
王族、貴族、奴隷が廃止され、全ての人民が共に同じ階級とされた。
労働者による国家となり、合理的且つ機能的な組織運用によって、傾いていた国力が急激に回復した。これは諸外国においても驚きであった。
しかしながら、彼らは社会主義の拡大を掲げ、周辺諸国への革命や侵攻を伺っているとされる。
ジウ達の行動はその一端であることは間違いが無かった。
そして、革命が失敗に終わったと解るとマギウスは新たな動きを見せる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます