第21話 パレード

 王都は祭り一色であった。

 彼方此方の通りに屋台が立ち、多くの人々で盛り上がっている。

 王都のメインストリートはパレードの為に警察が整理をしていた。

 前日に軍が綺麗に清掃を終えているので、ゴミ一つ落ちていない。

 多くの観衆が道路の端に並んで、パレードを待っていた。

 王城のバルコニーでは王や王族、要人が控えている。

 誰もがパレードを待ち遠しくしている。

 石畳で整備された道を行軍が始まる。

 先頭を行く軍楽隊が音楽を奏でる。

 続いて騎兵隊が足並みを揃えて進む。

 そして、音楽に合わせて、揃った足並みを見せる歩兵。

 その後を車両が続く。

 軍が誇る最新鋭の国産戦車が今回の目玉だ。

 地響きをさせて、彼らは王宮に向かって進む。

 

 街中はパレードの観衆でごった返す。

 パレードが到達すると歓声が沸き上がる。

 パレードの列の後方となるヴァキリー達もその歓声に驚いている。

 だが、操縦に必死のメアリには雑音でしか無かった。

 装甲車の運転手の視界は装甲板で窓を閉めてしまうとかなり狭い。

 僅か5センチの隙間から覗く感じになるからだ。

 それで他の車両と足並みを揃えるのは運転手だけの技量では何ともならない。

 砲塔から上半身を晒しているサラからの指示に頼るしかなかった。

 この間、無線士のミアのやる事はまったくない。

 彼女は狭い無線士用座席でただ、座っているだけだ。

 

 パレードは滞りなく、進み、列は王宮へと差し掛かろうとしていた。

 観客でごった返す中、突如として、銃声が鳴り響く。

 数発の銃声。

 バルコニーに着弾があった。

 王族達は近衛兵によって、護られる。そのまま、安全な室内へと移動させられる。

 パレードは突然の事に停止が命じられる。

 サラは「止まれ!」と命じた。

 メアリはブレーキとクラッチを同時に踏んだ。

 「いつでも発進が可能なようにギアを戻すな」

 サラは周囲を警戒する。パレードの車両に実弾は装填されていない。

 仮に攻撃を受けても応戦が出来ない。

 「先頭の方で銃声か・・・王族が襲撃を受けたか」

 サラの言葉にメアリ達は緊張する。

 有線式の車内通信設備は基本的に繋がりっぱなしである。

 独り言さえ、車内に伝わる。

 そこに無線が入った。ミアはそれを解析して、サラに伝える。

 「車長。パレード指揮所から通信。パレードは中止。パレードは中止。行動計画3号に従い速やかに撤退せよ」

 「了解と返事しろ。メアリ。転回して、街の外へと速やかに移動する」

 メアリは即座にハンドルを切り、装甲車を180度、転回させる。それに合わせて、部隊全体が転回を始める。

 パレードの列は速やかに街の外へと向かって動き出した。

 実弾を持たない彼らはテロリストに攻撃を受ければ良い的でしかない。

 それゆえ、非常時には逃げるしかなかった。

 

 だが、それは混乱の始まりであった。

 数百人の部隊が進路を変える事自体、大変な事だが、銃声によって、数万人の観客が大混乱になっている事が問題であった。

 警備をする警官隊は犯人を確認する事さえ、出来ない。

 近衛兵は王城の警護レベルを最大にする。

 城の門には1個中隊が配備され、蟻一匹も入れさせない。

 近衛兵の隊長、ロンメルは事態を重く見ていた。

 「狙撃にしては・・・甘い。王族を狙ったと言うより、その事実を作りたかっただけか・・・それとも」

 「敵は別の攻撃を用意している可能性がありますか?」

 参謀が不安そうに尋ねる。

 「可能性だけだ。方法も解らない。現状はパニックになっている民衆を何とかしないと・・・警察の方はどうなっている?」

 警察との連絡係に尋ねるが、警察も混乱をしているのか、彼も何度も伝令とやり取りするだけで、答えが出せないでいた。

 

 パレードの後端に居たヴァルキリー達は早々に城壁の門を超えて、外に出る事が出来た。

 「我々はここで待機だ。ミア。侍女待機室と繋げ」

 「承知しました」

 ミアは周波数を変えて、侍女待機室の通信室との無線通信を繋ぐ。

 ミアの通信に侍女待機室が応える。

 「繋がりました」

 「現在、城外にて待機中。戦闘が予想される為、実弾の配布を求むと打て」

 「承知しました」

 すぐに返信が来た。

 「事態が混乱している為、実弾配布の許可を出せない。現状維持されたしです」

 「そうか。弾が無ければ、何が起きても我々では何ともならないな」

 サラは諦めたように項垂れる。


 混乱する民衆の中を巧みにすり抜ける連中が居た。

 先ほど、狙撃をした連中だ。

 彼らの手には自動拳銃が握られている。

 混乱の中、彼らはある場所を目指していた。

 それは官庁街の中心にある行政府であった。

 警備の殆どは王城に配備されている。

 行政府は要人が殆ど、パレードの為に出払っている為、最低限の数となっていた。

 彼らはそこを襲ったのである。

 検問所に立っていた警備兵が一瞬で撃ち殺され、彼らは行政府に飛び込んだ。

 彼らの目的は行政府を破壊する事。

 手あたり次第に火を点け、爆薬を放り込んだ。

 次々と行政府内の警備兵から職員を皆殺しにして、彼らはそこを後にした。

 通報で警察が駆け付けるがすでに行政府は火の海と化していた。

 ジウは実行犯が逃げて来るのを待っていた。

 彼の仕事はここから彼らを無事に本国まで帰す事だった。

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