絶対に書籍化してほしいファンタジー百合作品!
- ★★★ Excellent!!!
この作品のファンタジー世界観はわりとシンプルで、設定自体もそこまで細かく作り込まれているわけじゃない。でも、それを適当に流すのではなく、ちゃんと丁寧に描いているのがいい。よくある「壮大な世界観を作ろうとして、結局支線がぐちゃぐちゃになる作品」とは違って、本作は限られた枠の中できちんとした構成を維持しているから、ストーリーの流れがスムーズで読みやすい。世界観の説明がゴチャつくこともなく、素直に物語に没入できる。
そして、やっぱりこの作品の一番の魅力はここ! キャラが背負うものや二人の絆にしっかりフォーカスしていて、無駄な設定に寄りかかっていない。もちろん世界観も十分に面白いけど、それ以上に「キャラの心情描写の深さ」が本当に素晴らしい。ストーリーの中には重い展開もあるけれど、作者の絶妙なペース配分のおかげで読んでいて辛くなりすぎず、二人の距離がじわじわ縮まっていくのがたまらなく尊い。特にキャラが少しずつ人間らしくなっていく過程は、ものすごく刺さる。「私たちは友達? それとも……?」「そもそも‘友達’って、私たちにとってどんな意味があるの?」みたいな問いが重なっていくうちに、感情の境界線がどんどん曖昧になる。その揺らぎがすごくリアルで、キャラたちの葛藤と成長があまりにも尊い。しかも物語が進むにつれて、後半はとんでもなく甘い! 心がとろける……尊すぎる……それに、作者の文章が本当に素晴らしい。どこか冷たさを感じさせるのに、同時に詩的で美しく、感情の流れがとても繊細。読んでいるうちに、いつの間にか物語に引き込まれてしまう。
間違いなく、今まで読んだ百合作品の中でも特に繊細なファンタジー作品のひとつ。書籍化してほしいし、何度でも読み返したくなる。こんなに美しくて尊い百合は、まさに宝物レベルの作品だった。