第56話わざとではなく、ついうっかり……
「わっ、私もピクシーが、皆が好きだよ! でも好きって認めちゃうと、皆がいないと生きていけなくなりそうで怖かったから、認めたくなかった! ねえピクシー死なないで! これからもずっと一緒にいてよ! 私、もうひとりぼっちは嫌だよ!」
アメリアは彼にすがりついて必死に懇願する。いなくならないで、と声の限りに叫ぶと、傷を抑えていた手のひらが急に熱くなった。
ぐっと体の内側から、熱が手のひらに集まっていく感覚がする。何が起きているのか分からないまま戸惑っていると、ピクシーの傷口があふれ出していた血がいつの間にか止まっている。
手で押さえている傷口が異様に熱い。何が起きているのか分からず、傷が悪化しているのかと血をぬぐって見てみると、傷がいつの間にか塞がっている。
「……えっ?」
傷は? とアメリアがオロオロしていると、さっきまで死にかけていたはずのピクシーがむっくりと起き上がった。
「ごめん、本当に死にそうだったから、ちょっとアメリアの魔力をいただいたの。ほんのちょっとのつもりだったんだけど、調整できなくて貰い過ぎちゃったみたい。回復しすぎちゃったわ」
ついうっかり~と舌を出すピクシーは、血色もすっかり良くなって、なんなら以前より肌ツヤが良く、元気いっぱいに見える。
「え、ええ~!?」
ちょっといただいたと言われても、アメリア自身は魔力が減ったと体感できるわけでもないから、何が起きたか全く分からない。
ただひとつ分かるのは、死ぬような怪我を回復させる分の魔力を吸われてもアメリア自身には何の影響もないという事実だけだ。
いずれ生気まで吸いつくされて死ぬなどと言われたから、魔力を吸われるともっと何か体に害があるのかと思っていたアメリアとしては、拍子抜けもいいとこだ。
「なんか肩透かしだけど、ともかくピクシーが死ななくてよかったよ……」
「そうね、アタシも…………アメリア!」
急に声を荒らげたピクシーに突き飛ばされる。驚いて彼を見上げると、ちょうどメディオラの執事が剣を振り上げ切りかかろうとしている光景が目に飛び込んできた。
だが回復していたピクシーの動きは素早く、アメリアを背に庇うと剣を振りかぶって無防備に晒された執事の胸に、先ほど自分を貫いたナイフを突き刺す。
心臓に刃を突き立てられた執事は、一瞬唖然としてそのまま真っ直ぐ後ろにバタンと倒れていった。
それを見て悲鳴を上げたのが、執事の後ろに立っていたメディオラだった。
先ほどピクシーの魔法で気絶させられていたが、いつの間にか目を覚ましていたらしい。
「私の執事になんてことするの! ああ……もう! 死んじゃったじゃない! アメリアいい加減にしなさい。苦しまないよう綺麗に殺してあげようとしているのに、どうして私に逆らうの!」
「ヤダ、もう復活しているの? あの魔女。脳みそ焼き切ってやろうとしたのにタフ過ぎない? あ、元が死体だから物理攻撃があんまり効かないのかしら?」
元気にギャンギャン叫ぶメディオラを嫌そうに見ているピクシーから、もう少し時間稼ぎしないと、と呟く声が聞こえた気がした。
メディオラは執事の死体をひっくり返して様子を見ていたが、すぐにもう使い物にならないと言って執事には興味を無くしたように足蹴にしている。
執事の死を嘆いているのかといえばそうでもなく、道具が使えなくなったかのような物言いをするメディオラに、アメリアは吐き気を覚える。
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