第4話 殺す神あれば救う神在り。その子達買います!!

「はいはい!! 寄ってらっしゃい見てらっしゃい! 明日には処分するから安くするよ!」


 そう言ってパンパン手を叩いている奴隷市場に走った。

 鼻を刺す獣臭と鉄の匂いが、息をするたびに喉に張りつく。

 そこには二人の子供が檻に入っていて、蹲った様子で顔を伏している。

 だが、その容姿は少し変わっていて――耳と尻尾があった。

 鑑定してみると【虎獣人の子供】とあり、もっと詳しく鑑定したところ――。


【虎獣人の子供・シュウ10歳:悪意察知・危険察知・投擲スキル7。現在のデバフ:衰弱】

【虎獣人の子供・ナノ8歳:回復魔法2・テイマー・空間収納(小)。現在のデバフ:高熱】


 その文字を見て俺と姫島はその奴隷商人に駆け寄ったのだ。


「すみません、その子たち二人買いたいんですが」

「お、お客さん買います? これ獣人ですけど良いです?」

「構いません!」

「すぐに買い取りたいのですが」

「ではぜひこちらに。おい、二人を連れてこい」


 そう言うと従業員に二人を連れてこさせ、契約書を手にした奴隷商人はニヤニヤした顔で「偽善ですねぇ」と笑っている。

 偽善だろうがなんだろうが、衰弱している子供を放ってはおけない。

 ――もう一人は高熱だ、急いで治療してやらないと!


「二人合わせておいくらでしょうか? 処分品ということですので無論お安いですよね?」

「まぁ、お安いと言えばお安いですよ?」

「というと?」

「ま~こっちもね、獣人ってことで売れ残るだろうなーって思ってたんで、買ってくれるなら良いんですけどね?」

「だから買うと言っているだろう?」

「そうですね、一人金500。どうです? お買い得でしょう?」

「それ以上安くは?」

「値切りますか……うーん」

「二人合わせて500なら買おう。それ以外なら買わない」

「先生!!」


 ここは駆け引きだ。

 相手がそこで折れれば、元々処分品と書いてあって一人金貨20と書いてあった。

 俺がそこを見ていないと思っているのだろう。

 だから二人で500でも絶対食いついてくるはずだ。


「仕方ないですねぇ……衰弱してますしその値段で良いですよ」

「ではこちらの金貨500枚を」

「ありがとうございます。奴隷の印をつけますか? それとも首輪だけにしますか?」

「首輪だけで頼む。取り外しは可能か?」

「奴隷の印ならまぁ……ジュッと焼いて付けておくだけなので良いんですが、首輪は外すと死にますよ」

「そうか……なら、一番小さい奴隷の印で頼む。できれば見えない所にな」

「承りました」


 こうして衰弱している二人には申し訳ないが、もう少し頑張ってもらい、身体の見えない位置に奴隷の印の一番小さいものを押し付けて俺の奴隷として登録した。

 二人は虚ろな目をしていたが、色々理解したようで絶望的な顔をしていたが――。


「では、二人をすぐに連れて帰りたいので失礼する」

「あ、これ契約書です」

「私が受け取ります。先生は二人を」

「カナエ、すまん!」


 そう言うと少年を背負い、少女を抱き上げそのまま一気に外に出る。

 キャンピングカーに入れるにしてもまずは外に行かねば。

 急いで外に出て昨日の位置に向かうと、周囲に人気がないことを確認し、すぐにキャンピングカーを出して中に入る。


「カナエ!」

「ネットスーパーのレベルが上がったので、医療用品が買えます!」

「二人に飲むゼリーを! あと解熱剤と冷えるピタリ。あと冷や冷や枕を頼む!」

「タオルもいくつか購入します!」

「男の子の方は衰弱で、女の子の方は高熱だ。床で寝かせたくないから布団も頼む!」

「はい!」


 頼んだものをポンポンと出すと、姫島はリビングに二つの布団を敷き、俺はまず女の子を寝かせ、次に男の子を寝かせて布団をかける。

 そしてカナエが女の子に飲むゼリーを飲ませている間に俺も男の子に飲むゼリーを飲ませ、体にすぐ染み渡る水を飲ませる。

 これはカナエが用意してくれたもので助かった。


 解熱剤は粉薬のようで、子供用の服薬ゼリーと一緒に飲ませるために手伝い、冷や冷や枕にタオルを巻いて二人の頭の下に敷き、おでこには冷えるピタリを貼り付けた。

 二人の熱を測ると39度近い熱が出ていて、男の子の方にも慌てて解熱剤を飲ませ、暫くはここから動けそうにない。

 異世界人にどれだけの効果があるかは分からないが……とりあえず明日まで様子を見ることになった。

 ――

 それだけで、転移した意味があると思えた。


 二人のことは心配だったが、これ以上どうすることもできない。

 カナエと二人外に出て、その間に、拠点レベルが上がったというので外に出て拠点を出してみると、確かにログハウスの家が出てきた。


「確かにログハウスだな」

「そうですね。中はどうなんでしょう」

「子供たちのことも気になる、急いでチェックしてみるか」


 ドアを開け中に入ると、そこはまたとても広い空間が広がっていた。

 キッチンはキャンピングカーの倍の大きさはあるだろうか?

 冷蔵庫も大になっているが、キッチンに関しては他は変わった様子はない。

 ただ、ログハウスだが個室ができていた。

 二部屋だが。

 それに風呂付きに脱衣所もあってトイレは二つ、機能はキャンピングカーと変わらない。

 食事をするダイニングテーブルとチェアが四つ。

 中央には少し長めのソファーと、ソファーの間に木製の机が一つ置いてあった。


「拠点が大きくなっていくと、部屋数も増えるのかもしれないな」

「そうかもしれないですね」

「複数の拠点を持つこともできるらしいから、本当にレベル上げてみないと分からないな」

「楽しみですね」

「ちなみに、ベッドは良いベッドだった。一部屋につきベッドが二つだ」

「高級品ですね」

「二人をこっちに連れてきた方がいいな……。こっちの方が色々と便利だ」


 ――そうと決まれば、俺たちの行動は早かった。


「女の子は私が」

「男の子は俺が見よう」

「あと、こっちでも生活しやすいように色々用意していいですか?」

「そこは任せる。ベッドマットも通気性の良い……そうだな、ガーゼ系がいいか、それで頼む」

「分かりました。用意しておきます」


 お互いに頷き合うと、俺はログハウスから出てキャンピングカーに戻り、一人ずつ移動させてベッドに眠らせた。

 キャンピングカーは今は必要ないと思い、消してからログハウスに入る。


 ベッドに運ばれた子供二人の呼吸はまだ浅いが……さっきよりは楽そうだ。

 鑑定してみると、飲むゼリーのお陰で少し栄養が入ったようで、【バフ:現在治療中】と出ていた。


 夜にもう一度飲むゼリーを飲ませ、解熱剤を飲ませてからドリンクを飲ませる。

 冷や冷や枕も交換して冷えるピタリも交換し、その日は看病するためにカナエと交互に眠りについた。

 ――そして翌朝二人はというと……異世界転移万歳、奇跡が起きていた。

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