ぎゅうぎゅう詰め

 在宅でフリーランスのデザイナーをしているSさんが、気分転換にと散歩に出かけたときのこと。

 散歩に出たのは夜中の10時過ぎで、コンビニでコーヒーを買おう、と思いながら近所の公園の脇を通りすぎようとしたときに、ふと違和感を覚え、足を止めて周囲を見渡しました。

 公園、異常無し。道路、異常無し。空、真っ暗。何に違和感を覚えたのか、気になってしまって立ち止まり、首を捻ること数十秒。

「電話ボックスだ」

 公園の端にある古い電話ボックスの灯りが消えていて、その暗さが違和感になっていたのでした。

「もう使う人もいないんだろうなー。時代だねぇ」

 などと、呟きながら電話ボックスの横を通ろうとして、


 Sさんはすぐに踵を返して、走って帰宅しました。


「灯りが消えてて暗かったけど、間違いない。電話ボックスは、ぎゅうぎゅう詰めだった。人で、パンパンだった」

 海外のアニメなんかでよくあるような表現で、絶対に現実では無理だろうというかんじに、電話ボックスの中にはみっちりと人間が詰め込まれていたそうです。暗かったけれど、見られている、と感じてすぐに引き返したそうです。

 それ以降Sさんはその公園の辺りには怖くて行けない、と話していました。

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