月に化けて
Cさんがとある山奥の温泉旅館に宿泊した時のお話。その旅館は駐車場から旅館の建物まで10分ほど山道を歩いて行く必要があり、途中に街灯も何もないので夜になると明かりが必要になる。
事前にお願いすれば旅館の従業員が提灯を持って迎えに来てくれるのだが、それが風情があると人気にもなっていた。
Cさんも迎えをお願いしていて、駐車場につくと提灯を持った従業員の女性が待っていた。
その日の観光や旅館についてなど、談笑しながら歩いていると、ふと周囲が明るくなったような気がした。月明かりかな、と見上げると、そこには満月が二つあった。瞬きし、目を擦ってからもう一度見るが、やはり二つ。
「あの、月が二つありませんか?」
そう聞くと、女性も月を見上げて、ふふ、と微笑んだ。
「昔から、狸に化かされる話があるでしょう? あれもそうなんですよ。まぁ、狸か狐か、それとも狢かそれ以外か、分からないんですけどね」
どうやら、月の綺麗な夜に時折、こうなるらしい。
「月に化けるだけなら、なんにも害が無いから、それでいいんですよ。変なものに化けて実害が出たら困るでしょう?」
しばらく二つの満月を堪能してから、Cさんは旅館に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます